渓流魚在来個体群生息域の推定

タイトル 渓流魚在来個体群生息域の推定
担当機関 山梨県水産技術センター
研究期間 1996~2008
研究担当者 坪井 潤一
発行年度 2009
要約 養殖魚と交雑していない渓流魚在来個体群の生息域は、広範囲で放流が行われてきた結果、最上流域に位置する小河川のみであり、本来の生息域より縮小していた。また、残されている在来個体群の生息域には河川工作物が多く設置されており、生息域が分断化されていた。推定された生息河川数は、富士川、相模川、多摩川の3水系で、イワナ57河川、ヤマメ24河川、アマゴ30河川であった。
背景・ねらい 河川上流部に位置する渓流域では、古くから遊漁を目的とした種苗放流が行われてきた。一方、水産資源増大のための放流は、養殖魚との交雑により在来個体群の遺伝子攪乱を引き起こす可能性があるため、近年問題視されている。そこで、地域遺伝子資源保全のため、在来個体群の生息域を明らかにし、種苗放流禁止や生息環境の保全を行う必要がある。本研究では、山梨県内を流れる富士川、相模川、多摩川水系において、放流履歴がなく、その地域独自の遺伝子が残されているイワナ、アマゴ、ヤマメの在来個体群生息域の推定を目的として調査を行った。
成果の内容・特徴 1996 年から2008 年にかけて調査を行った(表1)。聞き取り調査等で得られた渓流魚の生息域、放流履歴、河川工作物の情報を地形図に記録し、過去に放流が行れたことがなく、かつ養殖魚が河川工作物などの遡上阻害により侵入不可能な水域を、在来個体群生息域とした。養殖魚と交雑していない在来個体群は、イワナ57河川、ヤマメ24河川、アマゴ30河川で生息していると推定された(表1)。しかし、在来個体群の生息域は、最上流域に位置する小河川のみであり、治山ダムなどの河川工作物が多く設置されていた。河川工作物は、放流種苗の侵入を防ぎ在来個体群を隔離する上で有効に働いていると考えられるが、一方で個体群を上流域の狭い範囲内に押し込めることで、近交弱勢や個体数減少により局所的な絶滅を招くおそれがある。
今後、モデルケースとして、富士川水系における渓流魚在来個体群生息域の環境特性の定量化を図り、生息環境の保全につなげたい。特に、アマゴは標高1000m以下で(図1)、イワナよりも道路から近い場所に生息しており(図2)、治山ダム設置や種苗法流といった人間活動の影響を受けやすいと推測されるため、イワナよりも保全の優占順位が高いと考えられる。
成果の活用面・留意点 本研究の問題点として、漁業協同組合以外の放流(釣り人などによる個人的な放流)履歴を考慮していない点があげられる。そのため、本研究で推定された在来個体群の一部は、養殖魚との交雑個体群であるかもしれない。現在、イワナ、ヤマメ、アマゴについて遺伝子解析による個体群の在来・非在来の判別技術が開発されつつあり、早急な開発・普及が期待される。
図表1 234332-1.png
図表2 234332-2.png
図表3 234332-3.png
図表4 234332-4.png
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