腐らん病菌の病斑ごとに分離した菌株は栄養菌糸体不和合性を示し、互いに異なる

タイトル 腐らん病菌の病斑ごとに分離した菌株は栄養菌糸体不和合性を示し、互いに異なる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2001~2008
研究担当者 須崎浩一
発行年度 2010
要約 リンゴおよびセイヨウナシ園から分離された腐らん病菌(Valsa ceratosperma)は互いに栄養菌糸体不和合性を示す。本病は分生胞子の伝搬ではなく子のう胞子の伝搬によって引き起こされる可能性がある。
キーワード リンゴ、セイヨウナシ、腐らん病菌、栄養菌糸体和合性、個体群構造
背景・ねらい 腐らん病はリンゴ、セイヨウナシの重要病害であり、病斑上に形成された分生胞子および子のう胞子の飛散によって引き起こされる。糸状菌の栄養菌糸体和合性は、同一種の菌における遺伝的な差異と関連しており、和合性を示す菌株どうしは互いに同一個体、不和合性を示す菌株どうしは異なる個体とみなされる。対象とする糸状菌について同一園地に多数の栄養菌糸体不和合群が観察される場合、交配などの遺伝的組換えが高頻度で起こっていると考えられる。従来、本病は無性的に形成される分生胞子が伝染源として重要と考えられているが、園地内における個体群構造から、この点について再検討する。
成果の内容・特徴
  1. 既製(Becton Dickinson製)のオートミール寒天培地上で腐らん病菌菌株を対峙培養することによって本病菌の栄養菌糸体和合性の判別が可能である。25°C、暗所で一週間培養すると、和合性を示す菌株間ではコロニーどうしが融合する。一方、不和合性を示す菌株間ではコロニーどうしの境界に黒色の境界線が出現する(図1)。
  2. 複数のリンゴ園において胴腐らんを対象に調査を行うと、病斑ごとに分離された菌株は互いに不和合性を示す(図2)。複数のセイヨウナシ園においても、胴腐らんの病斑ごとに分離された菌株は互いに不和合性を示し、子のう胞子の伝搬による感染が示唆される。
成果の活用面・留意点
  1. 一つの分生胞子殻から採取した分生胞子塊から単胞子分離を行なって得られた菌株は互いに全て栄養菌糸体和合性を示す。分生胞子は子のう胞子に比較し飛散量が多く、また年間を通じて飛散することから伝染源として重要と考えられている。しかし病斑ごとに分離された菌株は互いに栄養菌糸体不和合性を示し、園地内における腐らん病菌の個体群構造は複雑である。このことから本病の発生は子のう胞子の伝搬によることが示唆され、腐らん病の発生生態を明らかにする上で新たな知見である。
  2. 子のう胞子の飛散は3月中旬から7月上旬に起こることが報告されており、この時期の重点的な防除によって本病の発生を抑制可能かどうか、今後の検討が必要である。
  3. 近年問題となっている枝腐らんについては調査を行なっておらず、枝腐らんについても発生生態のより詳細な解明のため個体群構造の調査が必要である。
図表1 234453-1.png
図表2 234453-2.png
カテゴリ 病害虫 防除 りんご

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