根こぶ病強度抵抗性のマーカー選抜が可能な「はくさい中間母本農9号」

タイトル 根こぶ病強度抵抗性のマーカー選抜が可能な「はくさい中間母本農9号」
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2003~2008
研究担当者 松元 哲
畠山勝徳
吹野伸子
鈴木 徹
佐藤隆徳
石田正彦
吉秋 斎
小原隆由
小島昭夫
坂田好輝
発行年度 2010
要約 DNAマーカーにより二つの根こぶ病抵抗性遺伝子(Crr1Crr2)を選抜した「はくさい中間母本農9号」は、根こぶ病菌系「No.5」に対して安定した抵抗性を示す。選抜マーカーは市販F1品種との識別性が高く、交雑後代から抵抗性個体を効率的に選抜できる。
キーワード ハクサイ、根こぶ病抵抗性、マーカー選抜、SSR
背景・ねらい 根こぶ病はアブラナ科野菜にとって難防除土壌病害の一つであり、近年根こぶ病菌の病原性の分化により抵抗性品種の罹病化が問題となっている。罹病化の主要因は品種の抵抗性が限られた遺伝子に依存していることであり、宿主範囲の広い根こぶ病菌系「No.5」にはほとんどの品種は抵抗性がない。「No.5」のような多犯性の菌系に対する抵抗性を効率よく選抜できる手法の開発が必要である。そこで、DNAマーカーで効率的に抵抗性系統を選抜できるハクサイ中間母本を育成する。
成果の内容・特徴
  1. 「はくさい中間母本農9号」は、根こぶ病罹病性の「はくさい中間母本農7号」(PL7)と飼料用カブ「Siloga」由来の抵抗性系統「G004」との交雑F3個体に、PL7を反復親として用いて、連続戻し交雑とマーカー選抜を繰り返し、根こぶ病抵抗性遺伝子Crr1Crr2をホモに固定し育成された品種である(図1)。その形状は長円筒形、球重が2kg程度であり、淡黄色の球内色を有し、PL7に類似している(図2)。
  2. Crr1Crr2を挟み込むそれぞれ2つのSSRマーカー型が「はくさい中間母本農9号」と同じ品種は極めて少ないため、これらのマーカーを用いることにより、「はくさい中間母本農9号」と市販根こぶ病抵抗性F1品種との交雑後代の中からCrr1Crr2をもつ個体を効率的に選抜できる(表1)。
  3. Hatakeyamaら(2004, Breed. Sci. 54:197-201)の分類に基づく、グループ1に属する「No.5」菌に対して、既存の根こぶ病抵抗性中間母本(農1~5号)や市販の抵抗性F1品種では、全個体が罹病性もしくは罹病性個体と抵抗性個体が分離する。これに対して、「はくさい中間母本農9号」は「No.5」菌に対しても安定した抵抗性を示す(表2)。
  4. マーカー選抜を利用して、「はくさい中間母本農9号」と罹病性系統とのF1に罹病性系統との戻し交雑を2回行い、自殖した後代系統のうちCrr1Crr2に連鎖する2つのマーカー型が「はくさい中間母本農9号」と同じ型をもつ個体は「No.5」菌に抵抗性となる(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 「はくさい中間母本農9号」とマーカー選抜を用いることにより、根こぶ病強度抵抗性ハクサイ品種を効率的に育成できる。また、ナバナ、カブ等のBrassica rapaに属する他のアブラナ科野菜の根こぶ病強度抵抗性品種の育成にも使用可能である。
  2. Crr1Crr2の抵抗性は、根こぶ病の菌系によっていずれも不完全優性または劣性形質として遺伝する。
  3. グループ3に属する根こぶ病菌系に対しては、「はくさい中間母本農9号」は罹病する場合もある。
図表1 234474-1.png
図表2 234474-2.png
図表3 234474-3.png
図表4 234474-4.png
カテゴリ 病害虫 あぶらな かぶ 飼料用作物 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 なばな はくさい 品種 防除

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