小面積草地の組み込みによる落葉広葉樹二次林の夏季放牧利用

タイトル 小面積草地の組み込みによる落葉広葉樹二次林の夏季放牧利用
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 井出保行
中神弘詞
発行年度 2010
要約 本州中部の落葉広葉樹二次林は、採食可能な飼料資源が量的・質的に不安定であるが、不足を補う小面積の牧草地を組み込むことで飼料資源は安定し、夏季放牧牛の体重維持が可能となる。
キーワード 落葉広葉樹、二次林、放牧、繁殖牛、林内草地
背景・ねらい 近年になり、里山の耕作放棄地において肉用繁殖牛の小規模移動放牧が盛んに行われるようになった。しかし、寒地型牧草地帯では夏季に草量が不足する場合もあり、周辺林地の利用も視野に入れる必要が出てきた。そこで、本州中部の里山に点在する比較的小面積の落葉広葉樹二次林に着目し、夏季(7月下旬~9月上旬)における放牧利用法を提示する。
成果の内容・特徴
  1. 放牧利用した二次林は、1982年以降に成立したもので、31種の木本類が出現する。上層部をミズナラ、カスミザクラ、コナラなどが占め、下層部をニシキギ、ミヤマウグイスカグラ、マユミなどが占める。立木密度(h≧0.5m)は153本/10aで、その96.7%は落葉広葉樹であり、本州中部域を代表する落葉広葉樹二次林の一形態(カシワ-コナラ群集)を示す。
  2. 放牧牛の可食域(高さ2mまでの範囲)には、全葉部量(41.6kgDM/10a)の6.6%が分布する(図1)。木本類の可食葉部量は、針葉樹等の不食樹種を除くと、2.1kgDM/10a程度であるが、放牧牛は樹葉を採食する際に枝条部も混食するため、実際の可食量はそれより多いものと考えられる。林床に分布するササおよび草本の葉部量は0.4kgDM/10a程度である。
  3. 採食された主な落葉広葉樹類の葉部は、CPの含有率が概ね12%を超え、NDFも低い水準にあり、良質な飼料資源であると判断される(表1)。ただし、枝条部の混食程度によって、その質は大きく変動する可能性がある。
  4. 放牧利用した二次林(1.4ha)に黒毛和種繁殖牛3頭(平均体重486.7kg)を夏季放牧すると、体重は安定することなく下落を続ける(図3)。その理由は、上述した飼料資源の量的不足と質的不安定さに起因しているものと考えられる。
  5. 改善策として、林内の比較的平坦な場所に小面積の牧草地(0.1ha)を造成し、そこへのアクセスを容易にする移動路を敷設すると、42日間はほぼ体重を維持することが可能になる(図2、3)。
成果の活用面・留意点
  1. 夏季の補完放牧地として、落葉広葉樹二次林が活用できる。
  2. 組み込む草地の面積は、二次林の面積に加え、構成樹種や密度、放牧頭数などに応じて設定する必要がある。
  3. 本試験では、造成草地において、6月中旬に植生維持(牧草の出穂抑制)のための掃除刈りを行っているが、放牧で代用することも可能である。その際、樹葉量がピークに達していない時期なので、利用の範囲は造成草地にとどめる。
図表1 234522-1.png
図表2 234522-2.png
図表3 234522-3.png
図表4 234522-4.png
カテゴリ 寒地 繁殖性改善

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