タイトル |
乾燥ストレス耐性を向上させた遺伝子組換えサトウキビ |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2007~2010 |
研究担当者 |
高橋 亘
伊藤裕介
中島一雄
篠崎和子
高溝 正
寺島義文
松岡 誠
寺内方克
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発行年度 |
2010 |
要約 |
シロイヌナズナ由来の不良環境耐性遺伝子DREB1Aを遺伝子組換え技術により導入したサトウキビは乾燥ストレス耐性を示す。
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キーワード |
遺伝子組換え、乾燥ストレス耐性、サトウキビ、バイオマス資源作物
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背景・ねらい |
南西諸島では多くの地域が例年、夏季の干ばつにみまわれ、サトウキビの単収が伸び悩んでいる。サトウキビを製糖用工芸作物としてのみでなく、バイオエタノール用の原料作物や飼料作物として利用拡大するには、現在よりも一層、単収増、低コスト化を図る必要があり、サトウキビへ乾燥ストレス耐性を付与することが強く求められている。そこで本研究では、南西諸島地域において干ばつでも安定して栽培できる品種の開発を目指し、遺伝子組換え技術により乾燥ストレス耐性に優れた育種素材を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 環境ストレス誘導性のイネlip9プロモーターによって発現が制御されるように構築されたDREB1A遺伝子(不良環境耐性遺伝子)の発現ベクターをパーティクルガン法によりサトウキビ(飼料用品種KRFo93-1)に導入すると、組換え体においてDREB1A遺伝子が発現する(図1)。
- 土壌水分条件をそろえるために、導入遺伝子の発現が確認できた組換え体(T0の栄養繁殖体)と非組換え体(対照)を同じ鉢の中で育成し、乾燥ストレス処理(30℃・無潅水)を数日間続けると、組換え体および非組換え体ともに環境ストレス耐性の指標であるクロロフィル蛍光の値(Fv/Fm)が減少するが、導入したDREB1A遺伝子を発現している組換え体は高い値を維持する(図2)。
- 1週間の乾燥ストレス処理により、非組換え体の葉(特に下位葉)は枯れるが、組換え体の葉は枯れにくく、緑色を維持する(図3A)。
- 乾燥ストレス後の潅水処理により、組換え体は素早く最上位葉の伸長を再開するが、非組換え体の再伸長は5日程遅れ、その後の生育も遅れる(図3B)。
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成果の活用面・留意点 |
- DREB1A遺伝子を導入した組換えサトウキビ系統は飼料用品種KRFo93-1に由来するが、将来的に、製糖あるいはバイオエタノール生産を目的とした乾燥ストレス耐性サトウキビ育種のための新たな育種素材としての活用が期待される。
- 他の植物において、DREB1A遺伝子は乾燥以外の様々なストレスに対する耐性(耐冷性、耐塩性等)も付与することが報告されていることから、本研究で作出した組換えサトウキビにおいても他の環境ストレス耐性が付与されている可能性がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育種
乾燥
さとうきび
飼料作物
飼料用作物
低コスト
繁殖性改善
品種
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