タイトル |
農地海岸保全のための海岸堤防と消波工の更新時期の推定法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2009~2010 |
研究担当者 |
丹治 肇
桐 博英
中矢哲郎
小林慎太郎
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発行年度 |
2010 |
要約 |
災害の履歴から海岸堤防と消波工の更新時期を推定する手法である。対象施設を、10m幅を単位としてブロック分割し、医学・機械分野で用いられている生存時間解析法を適用することにより、実態に近い施設の寿命を推定することができる。
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キーワード |
農地海岸堤防、施設寿命、カプランメイヤー法、生存時間解析
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背景・ねらい |
海岸堤防は伊勢湾台風直後に建設されたものが多く、劣化が進行しているが、被災損傷部分の補修はするものの、海岸堤防の寿命の定義とその推定法には定説が無く、整備財源が限られている中で、更新時期の推定法が行政から求められている。このため、海岸堤防と付帯施設である消波工を対象に、寿命の判定条件を提案し、その条件に従って、寿命を推定する方法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- 海岸堤防と消波工の寿命は、建設から更新までの期間として扱う。
- 従来あいまいとされていた「補修」と「更新」の区分を整理し、目地の補填等の軽微な維持管理を「補修」、設計性能が低下した場合や施設の大きな損傷が生じた場合に実施される追加建設や再建設を「更新」と定義する(表1)。
- 対象施設を、10m幅を単位としてブロック分割し、医学・機械分野で広く用いられているノンパラメトリックな生存時間解析法であるカプランメイヤー法を用いることにより、経過時間における生存確率の推定ができる。
- 適用例として、1959~1962年に建設され、2006年に被災した福島県の農地海岸1,400mを対象とする。1959年から2008年の間に8回(1961年、1964年、1985年、1986年、1993年、1996年、2002年、2006年)の災害と更新が記録されている(図1)。解析にあたり被災と更新にかかる時間データは月単位に整理する。
- 図2と図3にカプランメイヤー法で推定した、生存確率の変化を示す。点線は95%の信頼区間である。
- 海岸堤防の49年後の生存確率は30%であり、消波工の23年後の生存確率は20%以下と推定できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 提案手法は被災損傷による寿命が対象であり、性能低下による寿命を推定する重要な参考値となる。
- 被災損傷による寿命はポアソン過程に従うので、堤防群の将来寿命の推定には利用可能であるが、個別堤防の将来寿命の推定には利用できない。
- カプランメイヤー法は、生存確率50%の推定値の精度は高いが、生存確率0%の推定値のバラツキは大きい。また、観測期間を外挿して、0%の寿命を推定するにはパラメトリックな手法を用いるべきである。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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