タイトル |
イネの根の分泌タンパク質データベース |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2009~2010 |
研究担当者 |
信濃卓郎
岡 紀邦
小松節子
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発行年度 |
2010 |
要約 |
イネの根が分泌するタンパク質をプロテオーム手法により網羅的に解析する。無菌水耕培養液から得られたタンパク質には112の異なるタンパク質が存在する。機能的に分類すると、特に病害応答性の多数のPRタンパク質が無菌条件下においても分泌されている。
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キーワード |
イネ、無菌水耕栽培、根分泌タンパク質、PRタンパク質、データベース
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背景・ねらい |
植物は根圏に様々な化合物を分泌していることが知られている。しかしながら、タンパク質に関してはごく一部のタンパク質(酸性フォスファターゼ、キチナーゼなど)がストレスに応答して分泌されることが知られているのみである。根圏においてどのようなタンパク質が分泌されているのかに関して網羅的に解析し、植物が持つ根圏制御の可能性を明らかにすることを目指す。全ゲノム情報が明らかになっているイネを用いることにより、分泌されたタンパク質の由来を正確に決定することを可能にする。これにより、イネが持っている分泌タンパク質による根圏の制御機構の一端を明らかにできる。
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成果の内容・特徴 |
- 人工気象器内(18h明/6h暗、25度)で無菌的にイネ(品種:日本晴)を2週間水耕栽培し、回収した培養液からタンパク質を濃縮・精製する(図1)。通気は行なわず、根部は遮光した。
- LC-MS/MSを利用したショットガンシーケンシングによるプロテオーム解析の結果、無菌的に水耕栽培から得られるイネの根分泌物から112のタンパク質が同定される(表1)。
- 全てのタンパク質をRAP-DB (Rice Annotation Project Database)を用いてイネのタンパク質として解析が可能である。
- Signal P(アミノ酸配列からタンパク質にシグナルペプチドが含まれるかを明らかにするプログラム)による解析では54%のタンパク質にシグナルペプチドが存在することが示される(表1)。また、Target P(アミノ酸配列からタンパク質の分泌機構の解析を行うプログラム)による解析では64%のタンパク質が分泌機構を持っていることが示される(表1)。
- 病原応答に関わっていることが知られているPRタンパク質が全体の45%を占めている(表1)。その構成しているタンパク質ではキチナーゼ、ペルオキシダーゼが多くを占め、これまでイネにおいてタンパク質としての発現の報告がなかったPR4、PR13が初めて見出される(表2)。
- 得られたタンパク質を機能的な性格に基づいて分類すると二次代謝産物に関連しているタンパク質と防御応答に関わっているタンパク質でほぼ半分を占めている(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- イネにおいてはこの手法を用いて、各種ストレスに対して植物がどのようなタンパク質の分泌を変動させて対応しているのかをデータベースを用いて解析することが可能になる。
- ゲノム情報が明らかになっていない植物種ではタンパク質の機能解析の精度が低下する可能性がある。
- イネ以外の植物に本手法を適用する場合は、通気による微生物の混入に注意が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
根圏制御
水耕栽培
データベース
品種
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