タイトル |
フェストロリウムにおけるフェスクゲノム構成率の算出法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2009~2010 |
研究担当者 |
秋山征夫
久保田明人
山田-秋山仁美
上山泰史
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発行年度 |
2010 |
要約 |
フェスク属とロリウム属の属間交雑植物であるフェストロリウムにおける祖先種ゲノムの構成を評価するために、ゲノミックin situハイブリダイゼーション(GISH)法、画像解析法の応用により開発した、フェスクゲノム構成率(f ratio)の算出法である。
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キーワード |
フェストロリウム、GISH、画像解析、f ratio、飼料作物育種
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背景・ねらい |
ライグラス類とフェスク類交雑植物のフェストロリウム品種における永続性や環境耐性等の量的形質に、祖先種のゲノム量が関与している可能性があることから、ゲノム構成の数値化による評価法の確立が求められている。そこで、ゲノミックin situハイブリダイゼーション(GISH)法によってフェストロリウム個体における祖先種ゲノムを識別し、画像解析法を応用してフェスク類の平均ゲノム構成率(f ratio)を算出する手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 酵素解離空気乾燥法で染色体標本を作成し、不完全抗原のビオチン、ディゴキシゲニンで標識したライグラス類とフェスク類のゲノムDNAをプローブとしてハイブリダイゼーションを行い、蛍光色素テキサスレッド(赤色)、FITC(緑色)でシグナルを検出する。本マルチカラーGISH法により、フェストロリウム「東北1号」の1個体である栄養系1119の各祖先種ゲノムの識別が可能である(図1a)。栄養系1119ではライグラス類とフェスク類由来の染色体が複雑に転座を起こしている。
- DNAを特異的に染色する蛍光色素DAPIによって視覚化された染色体領域を、バックグランドを除いて抽出する(図1b)。GISHの結果(図1a)に基づいて図1bから染色体領域をライグラス類、フェスク類染色体断片に分離する(図1c, d)。それぞれの領域の蛍光強度積算値(領域におけるDNA量に相当)を解析し、下記の計算式によりf ratioを算出する。
f ratio (%)=フェスク類DNA量/(フェスク類+ライグラス類のDNA量)×100 - 細胞分裂ステージの進行とともに染色体が凝縮する際、染色体領域は一律に凝縮するわけではなく、凝縮のしやすさが異なる部分が存在するが、それが原因で生じる誤差の影響は見られず、いずれの細胞分裂ステージにおいてもゲノム構成率の算出が可能である(図2)。
- 栄養系1119の46染色体標本におけるf ratioは平均15.51±1.76% で、ライグラス類のゲノム割合が高い。
- この手法によって、栄養系1122のf ratioを算出すると平均11.47±1.92%である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本手法で算出されるf ratioは、フェストロリウム品種内における個体間の遺伝的均一性と、世代間の遺伝的安定性を示す新たな指標として活用できる。
- 品種の特性を示すf ratioを算出するため、適切な染色体標本数および個体数を検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
育種
カラー
乾燥
飼料作物
評価法
品種
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