タイトル |
根域冷却水耕栽培はトマト果実を甘くする |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
鈴木健策
岡田益己
藤村恵人
長尾 学
村井麻理
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発行年度 |
2010 |
要約 |
水耕栽培トマトの第一花房開花開始後に、根域が12℃前後となるように養液を冷却すると、根域温度が20℃の場合と比べて果実の糖度が高くなる。その効果は冬作で特に顕著である。
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キーワード |
トマト、果実、糖度、根域冷却、水耕栽培
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背景・ねらい |
施設栽培のホウレンソウなど葉菜類の糖度や栄養価を高める栽培法として、冬の寒さを利用した「寒締め栽培」が北東北地域を中心に冬季に普及している。寒締め栽培では根からの水分吸収が低地温により抑えられるために糖度上昇が促進されると考えられる。東北地域、特に中山間では10℃前後の地下水や湧水が豊富に得られる。この温度域で吸水が抑制される作物、例えばトマトにこれらの冷水を活用した根域冷却を行うことで、低コストで高品質な野菜を供給する新たな生産体系の確立が期待できる。
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成果の内容・特徴 |
- トマト「ハウス桃太郎」(タキイ種苗)をビニルハウス内に設置したNFT(Nutrient Film Technique;薄膜水耕)ベッドにおいて栽培し,第一花房開花後に、冷却槽で12℃に冷却した養液を発泡スチロールで断熱したNFTベッドへ循環させる(図1、図2)。液の循環中の水温上昇は1℃以下である。
- 図2のように、根域冷却では葉面積の著しい減少が特徴である。葉面積ほどではないものの、葉と根の重量も減少する。
- 果実重量および株当りの果実収量は、生重量では根域冷却によりやや減少するものの、乾重量では増加する。株当りの果実数の減少は10%以下である(表1)。
- 成熟果実の糖度は根域冷却により作期に関わらず増加し、特に冬作で著しい。成熟果実の酸度も根域冷却により増加するものの、増加率は糖度より小さい(表1)。
- 食味試験において、根域冷却栽培のトマトが甘み、味の濃さ、および旨味で最高評価を得た。また酸味は市販品と同等程度との評価を得た(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 根域冷却開始時の根の量が少ない方が果実の糖度は高くなるが収量は減る。糖度が12度を超えることもあり、最適な根域冷却開始時期については更に検討が必要である。
- 高温期の作型で5葉程度のセル苗を水耕ベッドに定植すると、開花までの間に生育が進み過ぎ、根域を冷却しても糖度が上昇しない。この場合12℃での根域冷却に先立ち、適切な時期に水温を14~15℃に調整して、生育を抑えておく必要がある。
- 養液の冷却に必要な熱交換コイル長は、NFTベッド長、源水温、養液の管理温度などから計算で求められる。岩手県のK社と共同で行った商品化のための実証試験では、熱交換チューブ全長80mに岩手山麓の湧水(源水温約10.5℃、熱交換コイル内供給時10~11.5℃)を通すことでベッド全長60mを制御した(100m程度まで可能)。なお東北農研では熱交換コイル(図1)への冷水供給に市販の冷却水循環装置を用いた。
- 上記実証試験では第5花房まで収穫したが、東北農研では試験設計の関係で2008年の収穫を第2花房までとした(表1参照)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
栽培技術
施設栽培
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トマト
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良食味
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