耕種農家主体の地域資源を活用した堆肥づくりシステムの形成と運営の要点

タイトル 耕種農家主体の地域資源を活用した堆肥づくりシステムの形成と運営の要点
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 尾島一史
発行年度 2010
要約 耕種農家を主体とした地域資源活用による堆肥づくりシステムの形成・運営には、堆肥づくり技術の普及や堆肥材料の収集を促す工夫による農家の活動意欲向上、農家が満足する堆肥の品質と販売価格の維持、一般向けの袋詰め販売による利益確保が重要である。
キーワード 耕種農家、家畜排せつ物、地域資源、良質堆肥、堆肥づくりシステム
背景・ねらい 畜産農家から発生する家畜排せつ物の処理が問題となっている地域は少なくない。現実的対応は、耕種農家が必要とする良質堆肥の製造と流通であるが、畜産農家の多くは良質な堆肥にするために手間をかける余裕がない。また、有機農業の地域での拡がりや化学肥料価格の上昇に伴い、成分バランスに優れたより良質な堆肥を求める耕種農家が増加している。そこで、耕種農家が良質堆肥を確保するために共同で堆肥づくりを行う事例を対象にして、形成・運営の課題への取り組み実態の分析を行い、耕種農家が主体となって多様な地域資源を活用した堆肥づくりシステムを形成し、運営する上での要点を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 取り上げた事例では、耕種農家(野菜農家中心の29戸)が共同堆肥づくり部会を設立し、地域資源を活用して成分バランスのよい良質完熟堆肥(改良畜ふん堆肥)づくりを年2回(50m3/回)行っている(図1)。酪農家の牛ふん堆肥、モミガラ、落ち葉等の地域資源の利用は、家畜排せつ物処理や未利用資源の有効活用につながっている。また、野菜農家はこの堆肥で栽培した認証野菜(町独自認証)の販売先の消費者グループと、自らが堆肥づくりを行っていることを活かした交流を行っている。すなわち、堆肥施設の見学会や消費者が一次発酵させた生ゴミ堆肥の受け入れを行うことで、堆肥づくりを野菜販売促進や消費者との関係強化に役立てている。
  2. 耕種農家を主体に地域資源を活用した堆肥づくりシステムを形成するには、普及機関等が良質堆肥を安定して生産できる堆肥づくり技術の普及や堆肥材料となる地域資源の収集を促す工夫を行って、耕種農家の活動意欲を高めることが重要である。また、堆肥づくり技術を持つ人材を育成・確保する仕組みづくりや、活動が自律的に行われるような事務局体制等の組織体制の確立が必要である。さらに、必要な施設・機械の確保、関係機関による活動開始時の重点的な支援も重要である(表1)。なお、関係機関は活動が軌道に乗った後も、技術的問題への対処法等の支援の要請に対応できる体制を維持する必要がある。
  3. 耕種農家が主体となって地域資源を活用した堆肥づくりシステムを運営するには、表1のように、耕種農家がメリットを確保できるような堆肥の品質、耕種農家向け販売価格を維持することが重要である。また、施設・機械の修繕や更新の積み立てが可能な財政基盤を確立する必要がある。そのためには、製造量の一部を袋詰めして一般に販売することが有効である。事例では、表2に示すとおり、参加農家分配後の余剰分5m3を袋詰めして一般に販売することで、機械を維持管理するための経費(点検・修繕費等)を確保することが可能になるとともに、地域の農家や消費者の良質堆肥を求める要望に応えている。
成果の活用面・留意点
  1. 対象とした事例は大都市に比較的近い中山間地域に位置し、参加者のほとんどは露地で小規模な多品目野菜生産を行う高齢の生産者である。
  2. 耕種農家が共同して、家畜排せつ物等の地域資源を活用して堆肥づくりシステムを形成する場合や、関係機関がこのような活動を支援する場合に参考資料となる。
図表1 234751-1.png
図表2 234751-2.png
図表3 234751-3.png
カテゴリ 有機農業 有機栽培 肥料 中山間地域 乳牛 未利用資源

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