タイトル |
窒素付加牛ふん堆肥の窒素成分保持量の向上および窒素濃度推定技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
田中章浩
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発行年度 |
2010 |
要約 |
堆肥脱臭システムにおいて、牛ふんに古紙を5%程度添加して製造した堆肥を脱臭用堆肥として使用すると窒素保持量が向上する。また、脱臭堆肥の窒素増加量はアンモニアモニターによって計測でき、pH又はEC(電気伝導率)で窒素濃度の上昇が推定できる。
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キーワード |
牛ふん堆肥、脱臭、アンモニア、窒素、有機質肥料
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背景・ねらい |
堆肥脱臭システムとは、ローダー切返し方式の通気型堆肥舎の1次発酵1週目槽及び2週目槽を半密閉式とし、堆肥化時の発生アンモニアを2次発酵が終了した脱臭用牛ふん堆肥に導入して保持させ、窒素を多く含有する窒素付加堆肥を生産する技術である。この窒素付加堆肥を効率よく製造するために、脱臭用堆肥へ炭素源として古紙5%を添加し窒素保持量の向上を図る。しかし、現状では窒素付加堆肥の窒素量を施用側の要求量に合わせることは困難である。そこで、堆肥発酵排気中のアンモニア濃度の簡易測定に基づく堆肥の窒素濃度推定技術等を開発し、窒素付加堆肥を製造するための簡易管理技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- オガクズ牛ふん堆肥の窒素保持量は、堆肥化1次発酵時に古紙を現物重量当たり5%程度添加して製造すると、菌体合成や硝化が促進され向上する(図1)。乾物重当たり窒素濃度4%の堆肥製造に要する日数は、1次発酵時に古紙を5%添加した堆肥では約80日間、牛ふん堆肥では約110日間である(表1)。
- アンモニアモニターを用いた脱臭用堆肥の窒素成分増加量(⊿N)は、入・排気濃度と外気濃度の濃度差(⊿C)と通気量(Q)から、⊿N=Q×(⊿C入気-外気-⊿C排気-外気)で推定可能である。脱臭用堆肥約35tを加えた脱臭槽での窒素成分増加量の実測値と推定値の関係は、Y(実測値)=0.927X(推定値)、決定係数0.822である(図2)。
- 堆肥中の窒素成分増加量の窒素形態毎の割合は、有機態窒素14.0%、無機態窒素86.0%である。脱臭用堆肥の全窒素濃度(C)とpH(P)、EC(E)の関係はC=-0.55P+7.17(r2=0.83)、C=0.134E+1.22(r2=0.93)となり、脱臭用堆肥のpH低下又はEC上昇により窒素成分増加量の推定ができ、脱臭システムの管理が可能である(図3)。
- 窒素付加牛ふん堆肥は窒素肥効率70%の即効性である。化学肥料換算窒素1kg相当の窒素付加牛ふん堆肥(窒素濃度4%DM)の処理経費(堆肥代を除く)は、古紙5%添加の牛ふん堆肥の場合280円/kg-N、牛ふん堆肥の場合350円/kg-N程度である。
- 牛ふん処理量21t/日の堆肥センターにおける堆肥脱臭システム(一次発酵槽の密閉、断熱配管、ファン、吸着槽、結露水回収構造等の脱臭設備、脱臭部分の建屋)のイニシャルコストは約982万円である。減価償却費(補助金なし、建屋38年、堆肥脱臭システム8年)は178万円/年、また電力費は126万円/年(12円/kWh)程度である。
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成果の活用面・留意点 |
- 牛ふんのローダー切返し方式堆肥センター等で、堆肥化臭気の脱臭(H14九州沖縄農業研究成果情報「堆肥吸着による脱臭システム」参照)と共に製造される窒素付加牛ふん堆肥を販売することで、脱臭経費を一部回収できるシステムとして活用できる。
- 古紙は有害・有毒物質や病原性微生物を含まないものを使用する。
- 脱臭槽内の堆肥は、桁行き方向で窒素濃度差があり奥壁部分の濃度が高くなる傾向があるので、使用時には桁行き方向に対して良く混合する必要がある。
- 窒素付加牛ふん堆肥はECが高いので、作物へ施用するときは気をつける必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
土づくり
肥料
簡易測定
管理技術
コスト
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