タイトル | 大規模圃場で水稲の自然交雑率を実測しました |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
芝池博幸 山村光司 松尾和人 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 平成20年及び21年の2ヶ年にわたって、農家が栽培する水稲の自然交雑率を実測しました。その結果、花粉源となる圃場から離れるにしたがって自然交雑率は急激に低下し、20mほど離れると自然交雑はほぼ生じなくなることが明らかになりました。 |
背景・ねらい | これまでの遺伝子組換え作物(GM作物)の花粉飛散や自然交雑に関する研究は、GM作物の開発に伴う小規模な試験栽培を円滑に行うために必要な情報を収集することが主たる目的でした。しかし、将来のGM作物の商業栽培に備えて、GM作物と同種の非GM作物の共存を図るルールを作るためには、大規模な圃場で発生する自然交雑の実態を明らかにする必要があります。そこで、本試験では水稲栽培農家の圃場を借り上げ、農家による一般的な水稲栽培を行った場合の自然交雑率を実測しました。 |
成果の内容・特徴 | 調査は茨城県つくばみらい市の水稲栽培農家の圃場を借用して実施しました。圃場内に花粉親区と種子親区を設置し、(表1、図1)、6月上旬に花粉親及び種子親品種を移植したところ、8月上旬~中旬の2週間が開花最盛期となりました(表2)。自然交雑率を測定するため、花粉親区と種子親区の隣接領域からは個体サンプル、花粉親区から様々な距離にある種子親区内からは方形区サンプルを抽出しました(図1)。脱穀・籾摺りを経て得た精玄米の総数は、平成20年が約400万粒、21年が約300万粒でした。これらの精玄米についてキセニア(胚乳色の差異)を発現したものを選別した後、DNAマーカ―を用いた品種判定ににより交雑種子を確定しました。花粉親区からの距離毎に平均交雑率と95%信頼区間を計算した結果(図2)、平均交雑率は花粉親区に隣接する領域で最も高く、花粉親区から20mほど離れると平均交雑率は0.01%を下回ることが明らかになりました。また、20m以遠の地区については、0.005%程度の自然交雑率になることが示されました。花粉親区に隣接する領域で観察された平均交雑率は、平成20年よりも21年の方が高い傾向にみられました。ダーラム型花粉採集器により採集した空中花粉を分析した結果、平成21年は花粉親区と種子親区で観察された花粉密度の増減パターンが一致し(図3)、両区の開花期が重複していたことが明らかになりました。また、開花期間中の風向及び風速を比較した結果(図4)、平成21年は東~南東(90度~135度)の風が多く観測され、花粉親区から種子親区への花粉飛散が促されたことが判明しました。これらの条件が揃った結果、平成20年よりも21年の自然交雑率が高くなったものとかんがえられました。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「遺伝子組換え生物の産業利用における安全性確保総合研究」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
カテゴリ | 水稲 DNAマーカー 品種 |