北海道後志地方におけるイカナゴ仔稚魚の資源生態的特徴

タイトル 北海道後志地方におけるイカナゴ仔稚魚の資源生態的特徴
担当機関 地方独立行政法人北海道立総合研究機構水産研究本部 中央水産試験場
研究期間 1999
研究担当者 星野 昇
発行年度 2010
要約 北海道後志地方で春季に漁獲されるイカナゴ仔稚魚(通称コウナゴ)のふ化時期と成長を耳石日周輪解析によって把握した。ふ化は3月中旬から4月下旬にかけての間、いくつかの時期に集中して行われ、その時期には大きな年変動があった。漁期中の成長量は1日あたり0.5~0.7ミリメートル程度で、遅い時期にふ化した方が成長量は大きく、また、後志南部海域より北部海域の方が成長量は大きい傾向があった。
背景・ねらい コウナゴ漁業は後志沿岸域の主力漁業であるうえに、水産加工業者にとっても主要な加工原魚で地域産業の依存度は高い。漁業者や加工業者は漁況に対し関心が高く、効率的な経営を図る上で精度の高い漁況予測や資源動向の分析を求める声は大きい。毎年の来遊時期や豊度の変動要因を理解するためには、ふ化時期や成長傾向の年変動、水温など環境要因との関係について検討する必要がある。当海域については10年程度の漁獲物体長組成や水温データの蓄積があるうえに、本種の耳石日周輪解析は当海域や本州産地での先例があり基礎技術が確立されているので、研究に着手し具体的な成果を得る可能性が大きいという背景がある。
成果の内容・特徴 2008年級群について、漁獲物の耳石日周輪解析を行い、漁獲物のふ化日組成とふ化時期ごとの成長曲線(図1)を把握した。漁期中の成長量は1日あたり0.5~0.7ミリメートル程度であるが、遅い時期にふ化した個体の方が成長量は大きい傾向があった。漁場となる海域ではふ化時期の遅い個体ほど高水温下で成長するので、このことが要因の一つと考えられた。2009年級、2010年級についても同様の解析を進め、後志南部海域と後志北部海域ごとに3か年分のふ化日組成を得た(図2)。それぞれの産地のふ化時期は、毎年3月中旬から4月下旬にかけての間で、その間、いくつかの時期に集中してふ化が行われる傾向があり、その時期には年変動や海域差があった。また、南部海域より北部海域の方が成長量は大きい傾向がみられた(図3)。
成果の活用面・留意点 ふ化から漁獲対象サイズまでの成長が漁場水温に大きく依存していることが判ったことで、毎年大きく変動する漁期については、その要因の一つとしてふ化時期からの経過水温(特に4月期)の影響があり、冬から春にかけての水温が低く推移する年は漁期が遅くなる(図4)といった関係を見出せた。これにより、漁期前に行う来遊予測の精度向上が図られた。さらに、当知見に基づき過去の漁獲物体長データを解析して、ふ化時期の年変動や来遊豊度に関わる水温の影響などを把握することが可能となり、解析を進めているところである。また、これまで知見の無かった後志北部海域における漁獲物の資源生態的特徴を把握したことにより、漁獲量減少の要因解明に向けた基礎情報が得られた。
図表1 234931-1.png
図表2 234931-2.png
図表3 234931-3.png
図表4 234931-4.png
カテゴリ 加工 経営管理 成長曲線

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