タイトル |
カサゴの放流技術開発 |
担当機関 |
宮崎県水産試験場 |
研究期間 |
2005~2009 |
研究担当者 |
大山 剛
市原 肇
廣川祐介
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発行年度 |
2010 |
要約 |
放流魚は放流地点付近に滞留する傾向があること、2年程度で放流地先に分散分布することが判った。標識魚の混入は後年放流群が漁獲に加わることで累積的に増加する傾向があった。放流年(条件)により回収に差が生じることが示唆された。小型魚ほど胃内容物に端脚類が出現する割合が高かった。カサゴ成魚による放流魚の捕食が確認され、放流サイズが大きいほど食害が軽減されることが判った。
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背景・ねらい |
カサゴは、単価が高く高齢者も操業可能な魚であることから種苗生産・放流要望の高い魚種であったが、種苗の量産化技術の開発に伴い、種苗の効率的な資源添加を図るための放流基礎技術開発が必要となった。
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成果の内容・特徴 |
- 1.放流した標識魚の動態
- H16までの放流に引き続き、H17~21において腹鰭切除標識を施した標識カサゴを児湯郡名貫川河口南側転石帯に放流した(図1)。試験操業、市場調査により、過去放流分も含め追跡調査を行い、放流魚は放流地点付近に滞留する傾向があること、2年程度の間に分布域が放流地先に拡がることがわかった(図2、4、5)。一方で、長距離移動を行う個体がいることも判明した(図3)。
- 2.漁獲カサゴにおける標識放流カサゴの混入状況
- 漁獲(放流地先分)における標識魚の混入は後年放流群が漁獲に加わることで累積的に増加する傾向にあった(図5)。放流年(条件)により回収に差が生じることが示唆された(表1)。
- 3.カサゴの成長と胃内容物組成(児湯地区)
- カサゴの成長は個体差、雌雄差が大きく、2歳半ば(5、6月頃)の平均的全長が雄で183mm、雌で153mmと推定され、全長制限(180mm)漁獲のもとでは雌は雄より高年齢で漁獲されやすいことがわかった。
- 胃内容物において、小型魚ほど端脚類(ワレカラ類、ヨコエビ類)の割合が高かったことから(図6)、放流海域は小型天然魚が多く分布する場所を基本として小型海藻類の繁茂など端脚類の棲息しやすい環境であることが望ましいと考えられた。
- 4.効果的な添加方法の検討
- 飼育実験によりカサゴ成魚による稚魚捕食が確認されるとともに、稚魚の全長70~117mmの範囲ではサイズが大きいほど食害が軽減されたことから、放流前の放流地点付近での成魚の事前漁獲の実施、海底放流など放流時の食害を軽減できる放流方法の採用、なるべく大きい稚魚の放流が効果的であることが示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
カサゴの漁獲加入は2才以上、寿命は10年以上であることから、引き続き調査を行い放流条件ごとの回収データの蓄積が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
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