タイトル |
漁場整備と栽培漁業とを連携させた市民参加による海づくり事業の検討 |
担当機関 |
神奈川県水産技術センター |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
工藤孝浩
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発行年度 |
2010 |
要約 |
県と市民との協働によって再生されたアマモ場にマダイ人工種苗を放流し、市民参加型のモニタリング調査手法とアマモ場放流の有効性について検討するとともに、小学生等を対象とした栽培漁業教室や放流体験を実施して海づくり事業の啓発普及を図り、実施上の問題点等を抽出した。
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背景・ねらい |
漁場整備事業や栽培漁業の市民理解と支援拡大を図るためには、市民参加が不可欠である。これまでの市民参加の試みとしては、アマモ場の造成活動や栽培漁業教室などが実施されてきたが、それぞれの連携は図られていなかった。そこで、小学生等を対象とした栽培漁業教室や放流体験教室を実施して若齢世代への海づくり事業の啓発普及を図るとともに、市民との協働により再生されたアマモ場にマダイ種苗を放流して市民参加型のモニタリング調査手法について検討し、漁場整備と栽培漁業を連携させた海づくり事業の実施上の問題点等を抽出した。また、調査にあたっては地元水産高校(県立海洋科学高校)との連携を図った。
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成果の内容・特徴 |
- 本調査では、水産基盤整備事業で整備した横浜市金沢区海の公園のアマモ場を活用し、小学生によるマダイ人工種苗の放流を柱として、生態系に配慮した漁場整備の必要性や栽培漁業の概念等に関する事前を含む勉強会の開催、種苗生産施設の見学・中間育成施設での給餌体験などを行い(表1)、事前・事後の参加者へのアンケート調査によって、海づくり事業に関する理解の深まりが測られた(表2)。
- 放流後のマダイのモニタリング手法の検討では、参加者の規模や年齢、経験等に対応可能な市民参加による手法を実施・評価した。すなわち、不特定多数の小学生親子に対してはROVを用いた観察が有効であり、潜水目視観察はアマモ場再生活動に参画したNPOのみならず一般ダイバーに対しても実施可能であった(表3)。
- マダイ小型種苗のアマモ場放流の有効性の検討については、マダイの成長に関する定量的な評価を下すまでには至らなかったものの、炭素窒素安定同位体分析によって同位体効果が確認され、アマモ場が小型種苗の中間育成場として機能する可能性が強く示唆された(図1)。これは、さらなる低コスト化と省力化が求められる現行のマダイ中間育成のあり方に一石を投じるものである。
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成果の活用面・留意点 |
全国各地で漁場整備や栽培漁業への市民参加が実践されることにより、海づくり事業への市民参加が醸成され、水産基盤整備事業に対する理解と支援が得られ、より円滑な事業運営を行えるようになる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
省力化
低コスト
モニタリング
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