漁船の操業を利用した水温鉛直分布データの収集

タイトル 漁船の操業を利用した水温鉛直分布データの収集
担当機関 石川県水産総合センター
研究期間 2009~2011
研究担当者 大慶則之
発行年度 2010
要約 漁場における水温の鉛直分布構造の変動は、各種魚群の来遊・分布に大きな影響を及ぼし、漁業情報として高い価値を有すると考えられる。そこで、簡便かつ効率的に水温情報を収集する手法として、底びき網漁具にメモリー式水深水温センサーを取り付けて、操業中に水温データを収集する新たな現場観測手法を試みた。この結果、広範な海域で多数の水温の鉛直分布データを収集することに成功した。
背景・ねらい 石川県沿岸海域は、対馬暖流沿岸分枝流の消長や気象擾乱に伴う急潮現象などによって、海況が複雑に変化しており、なかでも水温の鉛直分布構造の変動は、各種魚群の来遊・分布に大きな影響を及ぼすと考えられる。そこで、新たな漁業情報として水温の鉛直分布構造を漁業者に提供することを目的として、水温鉛直分布データを、広範囲に簡便に収集する手法の開発を行った。
成果の内容・特徴 観測機器には、JFEアドバンテック株式会社製メモリー水温深度計(COMPACT-TD)を使用した。メモリー水温深度計は10,15,20,30秒の観測インターバルが設定できるように改造した測器を使用した。事前に行った底びき網の沈降速度に関する調査では、15秒間隔のデータ記録によって、1.5~3mの水深間隔で水温・水深データが取得できたことから、観測間隔は15秒に設定した。測器は通水孔を開けた円筒状の金属ケースに収納し、底びき網の手木部分に取り付けて通常の方法でかけまわし操業を実施した。観測調査を行った底びき網漁船は、沖合底びき網漁船5隻(19~42トン)と小型底びき網漁船5隻(6.2~9.7トン)である。なお、連続観測が可能な期間はメモリーの制限上約1か月であった。2009年10月~2010年6月の間に、底びき網漁船10隻により、石川県沿岸の延べ2,580点で水温鉛直分布データを収集した。得られた観測値は、線形補間を行って5~500mまで5m間隔の標準層データに整理して、データベース化した。操業位置は、各船に取り付けたGPSデータロガーの記録から推定した。観測点の分布と各月別の水温分布を下図に示した。県沖合全域の陸棚上から陸棚斜面上で観測値が得られ、月集計したデータは躍層の変動をよく捉えていた。
成果の活用面・留意点
  • 通常の底びき網漁船の操業活動を利用して、広域的にわたって簡便にかつ効率的に水温鉛直分布データが収集可能できることが確かめられた。
  • 鉛直水温データと底びき網の漁獲記録を解析することにより、底びき網の漁場形成に及ぼす水温変動の影響が評価できる。
  • 近年、海洋観測予算の経費削減傾向が強まる中で、新たな観測データ収集手法として位置づけられる。
  • 通常操業の中で測器が扱われるため、深度センサーや水温センサーのトラブル発生頻度が高いことが問題であり、測器の耐衝撃性能の向上が課題である。
図表1 234953-1.png
カテゴリ GPS データベース

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