25.β−アミラーゼの基質保持機構

タイトル 25.β−アミラーゼの基質保持機構
担当機関 食品総合研究所
研究期間 1996~1999
研究担当者 深澤親房
荒平正緒美
発行年度 1999
要約 ダイズ β-アミラーゼについて、様々な残基の異変酵素の作製と、それらの酵素学的性質の解析を行った。その結果、基質のくり返し切断を可能にする酵素・基質複合体の形成とその保持機構に関わるアミノ酸残基の詳細を明らかにした。 
背景・ねらい
β-アミラ-ゼ(EC 3.2.1.2)は、(β/α)バレル構造を持ち、β-ストランドのC-末端領域が活性領域cavityを形成し、可動なループ構造が隣接している、いわゆるTIM型酵素である。この酵素はアミロース(α-1,4-glucopyranosyl
polymer)を、その非還元末端から連続的に、2グルコ-ス単位毎に切断し、最終的にはマルトトリオースに至るまで分解する。この間の酵素・基質複合体の形成・保持に、我々はLeu383の関与を指摘したが、Leu383単独ではその機構を説明しきれない。そこで、Leu383周辺の強い疎水性領域の形成に寄与している他の疎水性アミノ酸残基の同定を試みるとともに、それらの働きを分子レベルで説明する。
成果の内容・特徴 1.三次元構造のコンピューター解析から、いくつかの疎水性アミノ酸残基を選び出し、各残基を部位特異的変異法で他のアミノ酸に変換した後、大腸菌で生産・精製した。これら
の変異型β-アミラーゼを用いて酵素動力学的解析を行いkcat/Km
(s-1. mM-1)値を求めた。
2.β-アミラーゼの活性残基の1つGlu380をAspに変換したものに更に様々な変異を入れた、いわゆる二重変異酵素cDNAを各々作製し発現精製した。この二重変異酵素とアミロ-ス(DP18)との結合および解離定数を表面プラズモン共鳴法を用いて測定した。この結合は加熱変性させた変異酵素群では全く起こらない(図1)ことから、立体構造に由来した特異的な結合反応であるとみなした。
3.これら結合反応と酵素動力学的解析の結果を総合すると、Leu383が保持した(アミロース)基質は、同時にLeu383の側鎖とは、反対側の空間域に存在するTrp301やphe200とのファンデル・ワールス的相互作用によっても保持されていることが明らかとなった。
4.基質(最短はDPが5)が、最終的にマルトースとマルトトリオースになるまで、酵素から遊離することなく反応する機構としては、Leu383上に巻き付ける鎖長がなくなった短い基質が、Trp301や
Phe200により保持され、触媒残基があるcavityにフタをする様に動いてくる可動ループ上のAsp101と水素結合を形成して、cavity内の活性残基のある位置へ押し込まれ、定位置に固定された後に最後の切断を受けるものと推定した(図2)。
成果の活用面・留意点 β-アミラ-ゼは、甘味、医薬用輸液工業界では必須の酵素の1つであり、とりわけダイズ由来のものは、耐熱性に優れているため頻用されている。酵素動力学的パラメータに関連するアミノ酸残基の空間配置と機能の関係を詳細に解析することにより、その優れた機能の成り立ちが分子レベルで解明され、将来の機能強化酵素の創成につながる。
図表1 235054-1.gif
カテゴリ くり 大豆

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