16.磁気共鳴イメージング法によるイネ頴果の登熟過程における水分分布の観察

タイトル 16.磁気共鳴イメージング法によるイネ頴果の登熟過程における水分分布の観察
担当機関 食品総合研究所
研究期間 1998~2000
研究担当者 堀金明美
亀山眞由美
永田忠博
吉田充
発行年度 2000
要約 イネ小穂のMRI画像より、頴果の発達に伴う水分分布の変化を観測すると、胚乳の貯蔵デンプンの液相から固相への変化、背部維管束から胚乳表面の珠心上皮に沿って流れる水の分布、胚乳の中心線からに胚に達する水の存在が検出される。

背景・ねらい イネの登熟過程における頴果内部の水分分布や水の移動経路に関する知見は、収穫後のコメにおけるデンプンの物性や水の浸透しやすい部位に関する情報を与え、炊飯米のテクスチャーなど食味に関係し、米の品種特性あるいは加工適性の評価への利用が期待される。そこで、登熟過程におけるイネ小穂の磁気共鳴イメージング(MRI:NMRイメージングと同義)画像より、頴果の形態形成にともなう水分分布の変化を経時的に観測した。
成果の内容・特徴 1.イネ(コシヒカリ)を屋外のポットで栽培し、各小穂に開花日をマークした。開花後一定の日数を経過した小穂を含む穂を刈り取り、その中から正常に発育した小穂を選び、直ちにMRI測定に供した。
2.頴果中央部における2次元縦断画像(図1)は、小穂内での頴果の形態形成のみならず、登熟に伴う胚乳の貯蔵デンプンの液相(白く表示される)から固相(黒く表示される)への質的変化をも示した。
3.開花後15~20日の3次元画像は、背部維管束から胚乳表面の珠心上皮に沿って流れるスジ状の水の分布を明示していた(図2)。このスジ状の水の分布を示す画像は、組織学において推測されていた水の移動経路を初めて実証したものである。
4.開花後20~25日における縦断画像は、胚乳の中心線に水が存在し、それが胚に達していることを初めて明らかにした(図1-20d, 25d)。中心線はこれまで注目される組織構造ではなかったが、登熟後期の水の移動経路は、背部維管束から背腹経線を通り、中心線を経て胚に達することが示唆された(図3)。中心線が胚への水の移動経路としての重要な生理的機能を持つ可能性が示された。
成果の活用面・留意点 MRI法は、高水分の炊飯過程における米粒内部の水分分布変化の追跡のみならず、低水分の穀粒の登熟過程の観察にも有用であることが示され、植物生理学の分野への応用による新たな展開が期待される。イネの登熟後期において水は、頴果の背部維管束から背腹経線を通り、中心線を経て胚に達することが明らかになったが、炊飯時には、この経路を逆にたどって米粒内に水が浸入することが予想され、炊飯米のテクスチャーなど食味に関連する吸水の研究の新たな糸口が示された。
図表1 235066-1.JPG
カテゴリ 加工適性 植物生理 品種 良食味

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