配偶子洗浄による新たなVNN防除技術の開発

タイトル 配偶子洗浄による新たなVNN防除技術の開発
担当機関 (独)水産総合研究センター 養殖研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 森 広一郎
佐藤 純
池田 和夫
佐古 浩
井手 健太郎
菅谷 琢磨
岩崎 隆志
虫明 敬一
照屋 和久
発行年度 2010
要約 ウイルス性神経壊死症(VNN)は、PCR検査に基づく親魚選別や受精卵の消毒等の対策により、発生の頻度は大幅に低下したものの、未だクエやマハタ等のハタ類の種苗生産過程で発生し安定生産の大きな障害要因となっている。本研究では新たな垂直感染の防除策として、人工授精前の卵および精子を洗浄する方法(配偶子洗浄法)を開発した。
背景・ねらい ハタ類は、市場競争力のある新規重要養殖種として量産化が進められているが、種苗生産過程に頻発するウイルス性神経壊死症(VNN)が、本種の安定生産の障害となっている。本研究は、新たな垂直感染の防除法の開発を目的とし、人工授精前の卵および精子を洗浄する方法(配偶子洗浄法)について検討した。
成果の内容・特徴
  1. クエ親魚から搾出した精子を25%、60%Percollに重層し、不連続勾配遠心を行い、精子画分を回収し洗浄した。同様に搾出した成熟未受精卵(以下搾出卵という)を9倍容の人工卵巣液で分散し、静置後、上清を廃棄する操作を3回繰り返し洗浄した(図1)。洗浄精子の運動精子比を確認すると共に、洗浄した両配偶子を用いて湿導法による人工授精を行い、洗浄操作のふ化への影響を調べた。さらに、精子と搾出卵にそれぞれにVNN原因ウイルス(RGNNV)を添加し、洗浄操作後のウイルス除去率を調べた。
  2. 洗浄した精子を観察したところ、洗浄による運動精子比の低下は認められなかった。また人工授精した際のふ化率の低下も認められなかった(表1)。ウイルスで汚染した配偶子を洗浄しウイルス除去率を調べたところ、搾出卵では99.9%以上と良好であったが、精子では82.2%と低く、精子の洗浄法については操作条件の改良が必要と考えられた(表2)。
  3. 本法で洗浄したクエの配偶子を用いて得られた受精卵で種苗生産試験を行ったところ、当該施設で6年間発生が続いていたVNNの発生はなく、形態異常の発生も通常の生産と変わらず、良好な生産結果が得られた。
成果の活用面・留意点 新たなVNNの垂直感染を防除する対策として配偶子洗浄法を開発した。洗浄した精子のウイルス除去率は低く、精子の洗浄方法については改良の余地が残された。本病は我が国のみならず東南アジアやヨーロッパなどの多くの国々において、数多くの魚種(30種以上)で多発していることから、種苗生産過程で本病の被害に苦しむ全世界の養殖産業にも波及する成果と考えられる。
図表1 235146-1.png
図表2 235146-2.png
図表3 235146-3.png
カテゴリ 病害虫 防除

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