タイトル | 近赤外分光法によるズワイガニ品質の推定 |
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担当機関 | 島根県水産技術センター |
研究期間 | 2007~2009 |
研究担当者 |
清川智之 内田 浩 |
発行年度 | 2010 |
要約 | ズワイガニの身入り状態を、筋肉の固形分含有率(乾燥重量/湿重量×100、以下固形分とする)を基準として、近赤外分光分析法で測定する技術を開発した。また、筋肉の固形分と肝膵臓(カニ味噌)の品質には相関があり、身入りのよいズワイガニは肝膵臓の品質も高いと判断できる。 |
背景・ねらい | ズワイガニの品質を評価する場合、大きさはもとより身入りの善し悪しや肝膵臓の品質が重要な条件となる。しかし、これらを客観的な指標として示す技術は開発されておらず、現状では甲殻の硬さや外観から経験や勘を頼りに、習熟した現場担当者が品質分類している。島根県においてズワイガニは重要魚種の1つであり、身入りに関する客観的な品質情報を添付することは、さらなる評価の向上に繋がると考えられる。そこで、近赤外分光法により非破壊で迅速にズワイガニの品質を測定する方法を検討した。 |
成果の内容・特徴 | 原田・大谷(日水誌2006;72:1103-1107)は第3歩脚長節の水分を比較して、水ガニ(低品質)は硬ガニ(高品質)よりも水分含量が多いことや、硬ガニは水ガニに比べて肝膵臓の水分が少なく、粗脂肪が多いこと等を報告している。そこで、身入りについては筋肉の水分含量を基準とすることとし、歩脚の中で筋肉量が多く、しかも測定器のセンサーを密着させることが可能な第1、2歩脚長節を対象とした。 89個体から第1、2歩脚の中央部5cmの内容物を採取し、また42個体から第1、2歩脚が付いている左右胸部腹甲から厚さ1.5cm部分(含殻)を切り出して、湿重量及び乾燥重量を測定し、固形分分析値を算出した。図1に体重と歩脚部および胸部の固形分分析値との関係を示した。固形分で既存の品質区分(硬ガニ、次ガニ、水ガニ)に分けることができたので、この固形分で身入りの程度を表すことが可能と判断できる。なお、次ガニとは、品質が硬ガニと水ガニの中間の個体を指す。 歩脚および胸部の近赤外スペクトルをFQR-NIRGUN((株)静岡シブヤ精機)を用いて図2に示すように測定した。測定個体をさらに増やしてスペクトルの吸光度2次微分値と固形分分析値との間で、重回帰分析により検量線を作成した。図3、4に固形分分析値と近赤外分光分析法による固形分推定値との関係を示すが、精度よく推定できている。歩脚部固形分と胸部固形分との間には相関があり(F=1164、d.f=1、192、P<0.01)、どちらかを測定すればその個体の身入りの程度は推定できる。 FQA-NIRGUNで測定した胸部の固形分と肝膵臓の水分含有率および粗脂肪含有率の分析値との関係を図5に示した。相関関係があり、胸部固形分の高い個体は肝膵臓の品質も高いと判断することができる。 |
成果の活用面・留意点 | 1.島根県産ズワイガニの品質の高さを客観的な数値で示すことが可能となる。2.現場での銘柄区分作業にどのように組み込むのか、検討が必要。3.測定時のカニの温度により誤差が大きくなる可能性がある。4.近赤外分光分析器の機体間誤差の補正が必要の場合がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
カテゴリ | 乾燥 |