タイトル |
渓流魚の新放流方法である親魚放流の可能性について |
担当機関 |
岐阜県河川環境研究所 |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
徳原哲也
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発行年度 |
2010 |
要約 |
成熟した養殖アマゴ親魚を河川に放流し、産卵させる可能性を検討した。放流個体は産卵行動を行い、形成された産卵床の立地条件は既往の野生個体のものとほぼ同様であり、養殖放流個体でも正常に産卵できることが示唆された。また、発眼率は平均90.6%と良好であった。親魚放流は、発眼卵放流で問題になっている卵埋設場所選定の人的過誤や埋設時の人的負担を回避・軽減できるため有用であると考えられた。
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背景・ねらい |
発眼卵放流は今までの研究の中で良好なふ化率を得られない結果が報告されており、これは卵の育成に不適な場所を選定したためと考えられる。場所の選定は放流従事者の経験や能力に大きく左右されるが、専業者が減り、高齢化が進んでいると考えられる内水面漁業協同組合の現状において、場所選定の個人差の解消や埋設技量の向上を図ることは困難である。そこで発眼卵の埋設作業の代替策として、親魚放流(産卵期に十分に成熟した魚を河川に放流し、この放流個体に自発的に産卵させる方法)の可能性について検討した。
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成果の内容・特徴 |
河川に雌親魚14尾(平均尾さ長 34.3cm)、雄親魚28尾(平均尾さ長25.0cm)を放流し、放流親魚のペアリングおよび産卵床の有無を調査した。発見した産卵床に印をし、発眼期を迎えた時に、産卵床の発眼率(100×発眼卵/回収した卵の総数)を調べると共に、産卵床の河床形態(ふち、瀬、ふち尻)、長径、短径、水深、流速、砂れきの重量組成を求めた。産卵床は計16床発見され、14床がふち尻に、2床が瀬に形成されていた。産卵床の長径の平均は65.6±14.1cm(±は標準偏差。以下同様)であり、短径の平均は39.4±6.8cmあった。水深は平均20.5±9.0cmあった。表層流速は平均22.7±9.1cm/sec、底層流速は平均16.1±10.7cm/secであった。底質の割合は、16mm≦D<32mm(Dは粒径)のものが25.9%、 8mm≦D<16mmのものが18.9%、32mm≦D<64mmのものが17.9%の順で多かった。発眼率は平均90.6±7.2%であった。産卵床の立地条件は既往のアマゴ・ヤマメとほぼ同様であり、継代された養殖魚であっても、正常に産卵し、産着卵も総じて高い発眼率を得られたことから、親魚放流は発眼卵放流に代わる方法として実用的であると考えられた。
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成果の活用面・留意点 |
活用面:(1)発眼卵放流に比べ場所選定の失敗が少なく、作業量も少ない。(2)成魚放流を行っている漁業協同組合であれば特別な技術習得,用具購入の必要がない。(3)放流時期である産卵期は禁漁期なので漁獲による減耗がない。(4)発眼卵放流より孵化時期がより天然魚に近くなる。(5)稚魚放流成魚放流に比べ容姿のきれいな魚ができる。(6)産卵シーンを見ることができ、観光もしくは環境教育的な影響力がある。留意点:(1)本放流方法は在来個体群生息域では行ってはならない。(2)産卵適地の無い川には放流しても効果が望めない。(3)活魚トラックを保有していない漁業協同組合にとってはコストがかかる。(4)川沿いに車道のないと放流するのが難しい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
コスト
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