野外におけるフナ類の飛跳ね行動

タイトル 野外におけるフナ類の飛跳ね行動
担当機関 (独)水産総合研究センター 中央水産研究所
研究期間 2010~2010
研究担当者 箱山 洋
発行年度 2010
要約 ブルーギルなどの外来魚の侵入は日本の淡水生態系の大きな脅威であるが、河川工作物の施工を工夫することで外来魚の生息域全域への侵入を抑えられる可能性がある。野外調査から、魚類の飛び跳ね行動の性質の違いが、河川-水路間の堰での在来魚フナ類と外来魚ブルーギルの選択的な移動と分布の違いを引き起すのかを調べ、選択的な魚類移動が可能となる堰について定量的に検討した。
背景・ねらい ブルーギルやオオクチバスなどの外来魚の淡水生態系への侵入は日本の本来の生態系に重要な影響を与えており、個体数や分布の抑制が自然環境を保全するうえでひとつの課題となっている。そこで、本研究では堰など の河川工作物を工夫することで、外来魚が在来淡水魚の生息域全域に拡散しない方法を開発することを目的とする。フナ類などの在来淡水魚は飛び跳ね行動により、ある程度の高さの堰を超えて繁殖地となる細い河川に移動するが、ブルーギルやオオクチバスなどは移動の飛び跳ね移動をあまりしない。この性質を利用した選択的移動を可能にする堰の性質を定量的に明らかにする。
成果の内容・特徴 諏訪湖の流入河川と周辺の水田水路は堰板によって区切られており、水田水路の水位が高くなっている。我々の以前の研究では諏訪湖の流入河川には外来魚(ブルーギル・オオクチバス)及び在来魚(フナ類等)が分布していたが、水田水路には外来魚は分布していなかった。2010年5月に行った野外調査で、多数のフナ類が飛跳ね行動を行い、堰板を超えて産卵の為に水田水路に侵入する様子をビデオカメラで観察した。ビデオ画像の解析から、魚の飛跳ねの高さ、魚の体長、堰板の飛び越えの成功率について測定を行った。飛跳ね行動の観察(n=722)では、飛跳ねの高さは平均31.8cmで、飛跳ねていた個体の平均標準体長は10.8cmであった(図にヒストグラムを示す)。30分に5匹ほどのフナ個体が堰板を飛び越えた。また、フナの飛跳ねの高さの分布や魚の体長との関係には有意な正の相関があり、体長の大きな個体の方が高く飛跳ねる傾向があった(パラメトリック相関、p<0.0001)。外来魚の飛跳ね行動は観察されなかった。
成果の活用面・留意点 堰板が偶然に適切な高さであり、選択的な移動が行われたことが、諏訪湖の水田地帯に在来魚のみが侵入した原因であると考えられる。7月の土用干し時に水抜きが行われ、侵入した在来魚の産んだ稚魚の一部は河川に移動する。諏訪湖周辺のように在来魚のみが水路に侵入する事例は稀であり、魚類が水田水路に全く入れないか、外来魚・在来魚ともに水田水路に入り込むかのいずれかの場合が多い。今回の研究から選択的な魚類移動に適した堰の構造が明らかになれば、全国で新たな工法として活用することで、外来魚の繁殖地への侵入が抑制され、淡水域の生物多様性の保全に資すると考えられる。
図表1 235172-1.png
図表2 235172-2.png
図表3 235172-3.png
図表4 235172-4.png
カテゴリ 水田 繁殖性改善

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