高津川における天然遡上アユ資源増大を目指した資源管理

タイトル 高津川における天然遡上アユ資源増大を目指した資源管理
担当機関 島根県水産技術センター
研究期間 2007~2009
研究担当者 寺門弘悦
曽田一志
村山達朗
発行年度 2009
要約 天然アユの産地として全国的にも著名な高津川では近年アユ漁獲量の減少が著しい。島根県水産技術センターではアユ資源増殖のモデル河川として調査を実施し、その結果産卵期の親魚保護や産卵環境の整備といった資源管理方策を高津川漁協に提言した。この提言を元に平成20年度から高津川漁協は禁漁期の拡大や産卵場の造成など、天然アユの保護増大のための取り組みを始めた。
背景・ねらい 高津川におけるアユ漁獲量は、平成に入って減少が続いている。この間、種苗放流数は100万尾前後で安定していること、外部形態による判別から不漁年は漁獲物中の人工種苗割合が高いが平均的には20%以下であること、放流経費が漁協経営を圧迫していることから漁獲量を回復させるためには天然遡上魚の資源量を増加させるべきであるとの考えに立ち、天然遡上魚を増大させるための管理方策を検討した。
成果の内容・特徴 潜水観察と測量による調査結果から、H19年の産卵場面積は10年前の12,000㎡から4,700㎡に減少したことが認められた。また、産卵に適した5cm以下の礫が減少し一部の河床はアーマー化していることが確認された(図1)。さらに、最下流部の産卵場直下で行ったプランクトンネットによる流下仔魚の採集結果と河川流量から推定した流下仔魚数もH19年は5億3千万尾とH11年の調査開始以来最低であった。高津川においては、10月以降の漁獲量が増加すると、翌年不漁となる傾向がある。H19年は10月以降の漁協集荷量は3480kgと過去5ヵ年平均(1342kg)を大きく上回っている(図2)。また、流下仔魚数のピークから推定した産卵のピークは全面禁漁期間(10月16~25日)とほぼ一致する(図3)。以上のことから、秋の高水温と少雨などから親魚の産卵場への降下が遅れると全面禁漁措置が有効に機能せず親魚が産卵前に大量に漁獲され、結果的に流下仔魚尾数が減少することが推測された。高津川の河床型別水面面積を現地測量と航空写真から計測し、これに過去の潜水観察等から推定した解禁日時点での河床型別の収容密度を乗じて適正収容尾数526万尾を推定した(表1)。遡上から解禁までの生残率を過去の放流魚の歩留まりを参考に60%と仮定すると適正収容量に必要な遡上量は877万尾となる。一方、人工種苗放流尾数を利用してPetersen法により推定した遡上尾数と前年の流下仔魚量から回帰率を推定すると0.16%となった。管理指標を流下仔魚量とした場合、分布域を天然遡上が確実な水域に限定しても38億3千万尾が必要であると推定された(表2)。1999年~2007年の流下仔魚量の平均値は13億尾であり、最も低い管理目標を設定しても親魚量を現行の3倍残し、産卵場を確保することが必要である。
成果の活用面・留意点
  • 水産技術センターでは高津川漁協に対し「禁漁期間、禁漁区の拡大による親魚確保」、「産卵場の整備」という資源管理方策と、当面の数値目標として「流下仔魚尾数30億尾」という管理指標値を提示した。
  • 高津川漁協では、提言を受けてH20年より禁漁期間を40日間延長するとともに、産卵場の造成、取水堰堤の利用による親魚降下対策を実施し、H20年の流下仔魚数は11億尾とH19年の2倍以上となった。
図表1 235178-1.png
図表2 235178-2.png
図表3 235178-3.png
図表4 235178-4.png
図表5 235178-5.png
カテゴリ 経営管理

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