タイトル | REDD+実現のため、衛星リモートセンシングと地上観測を組み合わせ、熱帯林からの炭素吸排出量をモニタリングする |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
清野 嘉之 松本 光朗 佐藤 保 高橋 與明 伊藤 江利子 古家 直行 粟屋 善雄 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 減少・劣化が進む熱帯林からの炭素吸排出量をモニタリングする手法を開発しました。 |
背景・ねらい | 熱帯林の減少・破壊は1950年代から増え、今もとどまる気配がありません。排出される温室効果ガス量が膨大であることから、国連が中心になって、途上国の森林からの排出量を減らす新しいしくみ(REDD+と略称される)(図1)作りを進めています。これに資するため、減少・劣化が進む東南アジアの森林を対象に、生態学的視点にもとづき、衛星リモートセンシングと地上観測を組み合わせて森林からの温室効果ガスの吸排出量をモニタリングする手法を開発しました。 |
成果の内容・特徴 | モニタリングの手順吸排出量を計測する方法には成長量-損失量法と蓄積変化法があります。前者は、成長による吸収量と伐採など攪乱による損失量との差を吸排出量とするもので、林地生産力や伐採量・森林火災などのデータが必要です。しかし、違法伐採などによる森林劣化では伐採量の把握は困難です。このため、炭素蓄積量の変化を吸排出と捉える蓄積変化法が適切と考え、東南アジアで実行可能と考えられる複数の方法を選んで、取るべき手順を示しました(図2)。まず、森林タイプ・土地利用タイプをリモートセンシングなどで区分し、各区分の森林面積を把握します。つぎに、各タイプの単位面積当たり炭素蓄積量を5つの方法のいずれかで推定します。そして、両者を乗じてタイプ別の炭素蓄積量を把握します。これを、時間をおいて繰り返し、炭素蓄積量の差分から吸排出量を推定します。 森林の区分と面積のモニタリング森林の区分や面積の計測は、中解像度以上のリモートセンシングセンサを用いて実施できます。ただし、光学センサ*は一年中雲が多い熱帯雨林などではあまり使えません。また、合成開口レーダ*も急斜面にある森林には使えないので、複数の方法を組み合わせ、弱点を補い合う工夫が必要です。単位面積当たりの炭素蓄積量のモニタリング単位面積当たりの炭素蓄積量のモニタリングは、森林タイプや森林減少・劣化の原因によって適切な手法が異なりました。すなわち、抜き伐りが行われる大木林に対しては、一つ一つの樹冠を判読できる高分解能のリモートセンサを用い、樹冠をモニタリングして炭素蓄積量の変化を把握できます。焼畑が盛んな地域では、休閑地に成立した二次林に対して、中解像度以上のセンサで焼畑の土地とサイクルを把握し、休閑年数(収穫後の年数)をパラメータに炭素蓄積量を推定できます。この他、条件は限られますが、合成開口レーダの後方散乱係数や群落高、固定調査プロットの毎木調査データも炭素蓄積量の推定に利用できます。排出量削減の能力向上の支援のために排出量削減の新しいしくみでは、途上国自身が森林をモニタリングしていく体制が不可欠です。今回の研究開発にはカンボジアやラオス、インドネシアの研究者が参加しています。それぞれ国の森林・環境政策に深く関わっている人々ですので、この研究で得られた知見が実地でも生かされると期待しています。また、成果の公表により、REDD+に取り組む世界の人々が知見を利用できるようになります。本研究は、環境省の地球環境研究総合推進費「森林減少の回避による排出削減量推定の実行可能性に関する研究」(平成19-21年度)、及び「PALSARを用いた森林劣化の指標の検出と排出量評価手法の開発に関する研究」(平成20-22年度)による成果です。 詳しくは環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/policy/kenkyu/index.htmlをご覧ください。 参考文献:Kiyono Y, Furuya N, Sum T, Umemiya C, Itoh E, Araki M, Matsumoto M (2010) Carbon Stock Estimation by Forest Measurement Contributing to Sustainable Forest Management in Cambodia. JARQ 44(1):81-92. *光学センサ 太陽光の反射を計測して地上の状態を知る方法です。一般のカメラなどと同じ原理です。 *合成開口レーダ 上空からマイクロ波を発し、地上からの反射を計測して地上の状態を知る方法です。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | モニタリング リモートセンシング |