タイトル | 木質バイオマスの大量収集に適した地域を特定する |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究担当者 |
久保山裕史 上村佳奈 山本幸一 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 林地残材や製材工場残材等の木質バイオマスの発生量と供給コストから供給可能量を推計し、発電所やエタノール工場等の大規模プラントの設置に適した地域を推定しました。 |
背景・ねらい | 地球温暖化問題の主な原因として大気中の二酸化炭素の増加があげられています。林業では、光合成によって空気中の二酸化炭素を取り込むことで成長した樹木を利用しており、伐採にともなって発生する林地残材や、丸太の加工で発生する製材残材、家屋の解体で発生する建築廃材等の木質バイオマスを利用しても、大気中の二酸化炭素を増加させません。そのため、化石燃料の代わりに利用すれば温暖化防止に役立ちます。我が国には森林資源が豊富にありますが、林地残材や製材工場等の工場残材をどれだけ実際に供給できるかはよくわかっていません。そこで本研究では、残材の発生場所と供給コストから、木質バイオマスの供給可能量を推定する手法を開発し、大量に供給できる地域を特定しました。 |
成果の内容・特徴 | 発生量と供給コストの推計木質バイオマスの発生量を推計するには、林地残材の発生する伐採地の場所と伐採量、また、工場残材が発生する製材工場等の場所と生産規模を知る必要があります。それらの精確な場所は不明なため、政府の統計に基づいて市町村ごとに分布を推定しました。続いて、道路のデータから、図1のように25㎞、50㎞、75㎞、100㎞という4つの範囲を設定し、日本全国の約1,750市町村を対象に、集荷範囲ごとの木質バイオマスの発生量を推計しました(表1)。供給コスト(収集、チップ化、輸送を含む)は、現状の機械システム(現状型)と、欧州の高効率のチッパートラック(写真1)やコンテナートレーラーを用いた場合(欧州型)の2つについて、聞き取り調査などから推定しました(表1)。 供給可能量の推計結果形態別の発生量と供給コストから、経済性を考慮した木質バイオマスの供給可能量が推計できます。例えば、表1において5千円/生t(2生t(含水率100%)=1乾燥t)以下で供給可能な木質バイオマスは、供給コストの青色の部分に対応する発生量を合計した29971生tとなります。同様にして、7千、9千、1万1千円/生t以下なら、それぞれ、緑色、黄色、オレンジ色の部分までということになります。このようにして、あるコストの下での供給可能量を市町村ごとに推計することが出来ますが、図2に示したように、5千円/生t以下で5万生t以上集荷可能な市町村はわずか13カ所ですが、9千円/生tの場合には1000カ所以上に急増することがわかりました。7千円/生t以下での供給可能量が大きい地域を色分けした結果が図3です。現状型では、5万生t以上集荷可能と推計されたのは、製材生産の盛んな7つの地域でした。最大となった広島県臨海部には、輸入丸太を利用する大型の製材工場が複数ありますが、そこでは製材の乾燥等に残材の多くを消費しているため、実際の供給可能量は推計値よりも小さい可能性が高いです。他方、欧州型の場合、現状型に比べてコスト低下の大きい林地残材が大幅に増加して、林業 ・ 林産業の盛んな6つの地域において供給可能量は20万生tを越えました。これらの地域では、大規模プラントの設置可能性が高いと考えられます。なお、欧州型では、大部分の地域で供給可能量は5万生t以上となり、中小規模の利用であれば全国的に可能であるという結果が示されました。 本手法によって、プラントの設置候補となる市町村を、バイオマスの供給コストを考慮して選定することができました。また、異なる供給コストでシミュレーションすることもできました。本手法では、林業 ・ 林産業の盛んな地域において供給可能量の大きな市町村が複数選定されるので、いずれかの市町村に大規模なプラントを設置した場合には、その周辺の市町村の供給可能量は大きく減少することに注意が必要です。また、具体的な検討にあたっては、地域の工場残材の利用状況や、林地残材の発生状況等について詳細な検討を行う必要があります。 本研究は、独)産業技術総合研究所からの委託研究「中小規模雑植性バイオマスエタノール製造における原料供給・利活用モデルに関する研究」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
カテゴリ | 加工 乾燥 コスト 輸送 |