タイトル | 菌床しいたけ害虫ナガマドキノコバエを捕らえるLED誘引捕虫器の開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
北島 博 大谷 英児 杉本 博之 阿部 正範 西澤 元 石谷 栄次 藤林 範子 宮川 治郎 川島 祐介 國友 幸夫 陶山 純 本荘 絵未 岡本 武光 薦田 邦晃 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 「光」と「匂い」の相乗効果でナガマドキノコバエ成虫を誘引し、強力な粘着シートで捕らえる、「LED誘引捕虫器」を開発しました。 |
背景・ねらい | 我が国で生産される生しいたけの8割近くは、菌床栽培によって生産されています。ところが近年、ナガマドキノコバエという害虫が栽培施設内で異常発生して、生産者を悩ませています(図1)。その幼虫が、しいたけを食害したり、商品に混入したりするからです。そこで、本種の異常発生を防ぐために、成虫を効果的に捕らえるLED誘引捕虫器を開発するとともに、その効果的な使用方法を提言しました。 |
成果の内容・特徴 | LED誘引捕虫器の開発近紫外線LED(発光ダイオード)の「光」と、乳酸発酵液の「匂い」を誘引源として、ナガマドキノコバエ成虫を強力な粘着シートで捕らえる「LED誘引捕虫器」を開発しました(図2)。光と匂いの相乗効果によって、乳酸発酵液だけを用いた従来の捕虫器に比べて3倍程度の捕獲を目指しましたが、さらに粘着シートを用いることで捕獲効率が飛躍的に高まり、従来型と比較して6.5倍の成虫を捕らえることが可能になりました。LEDは省電力なので、アルカリ単3乾電池3本で1.5ヶ月間連続点灯できます。またコードレスとしたことで持ち運びが容易で、防水性も抜群です。栽培施設内はしいたけ発生のため高い湿度に保たれていますが、このような環境でも漏電の不安もなく、安心して設置できます。 誘引された成虫は、透明な強力粘着シートで捕らえます。透明シートでも近紫外線の約6割をカットしてしまうので、それを防ぐため、LEDを粘着シートの外側に配置しています。 本器はみのる産業株式会社によって、「LEDキャッチャー」(特許および意匠登録出願済み)の名称で販売されています。 LED誘引捕虫器の効果的な設置方法LED誘引捕虫器は、成虫が多く見られる場所に持ち運んで設置できますが、設置する高さが捕れる成虫の数に影響を与えます。一般的な栽培施設では、高さ180cm程度の棚の各段に菌床を置きます。棚のさらに上、天井付近には既製の光誘引捕虫器が設置されている場合があります。このような施設では、本器を棚の中段に置くことで、上部の成虫は天井付近の光誘引捕虫器で、棚付近の成虫は本器でと、効率的に捕らえることができます。 一方、天井付近に光誘引捕虫器がない栽培施設では、棚の上部で捕らえた成虫の数が多く、下部では少なくなりました(図3上)。産卵を済ませていない雌成虫を捕れれば高い防除効果が得られると考え、捕らえた雌成虫がおなかの中にもっている卵の数を調べてみました。すると、卵の数は棚の中段と下段で捕らえた雌成虫で多かったことから (図3下)、このような施設では、LED誘引捕虫器を棚の中段から上部にかけて置けば効率が良いことがわかりました。 このように、従来の捕虫器よりも格段に捕獲能力の高い安全な捕虫器を開発し、商品化に成功したことで、安全・安心、かつ害虫の食べ跡がない良質なしいたけの生産に寄与できます。 これらの成果は、農林水産省の新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業 No.1958「菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエの環境保全型防除技術の開発」によるものです。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 病害虫 害虫 しいたけ 防除 |