岩手・宮城内陸地震によって発生した土砂災害の特徴と発生機構

タイトル 岩手・宮城内陸地震によって発生した土砂災害の特徴と発生機構
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 三森 利昭
大丸 裕武
岡本 隆
黒川 潮
村上 亘
多田 泰之
小川 泰浩
岡田 康彦
大野 泰宏
野口 正二
安田 幸生
浅野 志穂
発行年度 2010
要約 岩手・宮城内陸地震で発生した崩壊の地質、地形的影響について解析を行い、火山地帯特有の堆積構造が特に影響を与えていることを明らかにしました。この結果をもとに地質・地形別の発生率から危険度マップを作成しました。
背景・ねらい 2008年6月14日午前8時43分に、岩手県南部の内陸部を震源とする地震 (M7.2) が発生し、死者17名、行方不明6名という大きな被害が生じました。この地震による災害では、建物への被害は少なく、山地での崩壊とそれに伴う土石流による被害が主でした。今回の地震は、東北内陸部火山地帯での潜在的な活断層の活動によって起きたとされています。このような潜在的な活断層と火山堆積物を主とする地質の組合せは東北地方を始め国内に広く存在することから、災害を未然に防ぐ行政的な観点から研究対応が求められています。このため、本地震災害における土砂災害を集約して地質・地形などの影響を分析し災害のメカニズムを明らかにするとともに、危険度評価技術の開発を行いました。
成果の内容・特徴

山地災害データベースの作成

災害直後に撮影した航空写真とALOSの衛星可視光画像を用いて、岩手・宮城・秋田にまたがる被災区域のほぼ全域から、11,163箇所、1,372haの崩壊地を目視によって独自に抽出し、GIS上に記載しました。これらと地質図、地形図など崩壊の発生に関与する他のデータを重ね合わせることで、各要因の影響解析が可能となる「山地災害データベース」を作成しました。

地質の影響

このGISデータベースを用いて求めた地質別の崩壊発生状況では、「北川溶結凝灰岩及び相当層」と「湖成層」での崩壊発生率が3%近くに達しており、両地質での崩壊が突出して多い事が判明しました。地質と崩壊を重ね合わせた図1では、特に、南部の一迫川流域から三迫川流域にかけて両層の境界付近で崩壊が多発しているのがわかります。両層は新生代第三紀から第四紀にかけての堆積層で、特に「湖成層」は固結度が低い軟弱な地層であり、地震時の破壊強度も低いことがわかりました。現地調査の結果、上層が堅い「溶結凝灰岩」、下層が柔らかい「湖成層」の構造(キャップロック構造といいます)で急勾配の箇所が崩壊・地すべりを多く発生させていました。更に、詳細な現地調査では、軟質岩中に崩壊には至らない程度のすべりが発生している箇所も多数見いだされ、豪雨の際には注意が必要であることも明らかにしました。

地形の影響

被災した区域は、10~20度の傾斜にピークを持つ比較的なだらかな地形でしたが、今回発生した崩壊は、30~40度での頻度が最も高く、急勾配で発生しており、従来の地震災害と同様の傾向がありました。傾斜別の崩壊占有率では、荒砥沢地すべりを反映して、0~4度の斜面で高い値を示しています。崩壊発生率は45度を超える斜面で急増する傾向があり、キャップロック構造を反映した結果となりました(図2)。

危険度評価技術(危険度マップ)の開発

これらのうち主に崩壊の発生に大きな影響を与えていた地質・地形区分別の崩壊発生率をもとに危険度マップを作成しました(図3)。この成果は東北森林管理局に提供され災害復旧に役立てられます。

本研究は、「予算区分:交付金プロジェクト、課題名:岩手・宮城内陸地震によって発生した土砂災害の特徴と発生機構に関する研究」による成果です。
図表1 235191-1.png
図表2 235191-2.png
図表3 235191-3.png
カテゴリ データベース 評価法

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