品種や樹幹内部位によって異なるスギの収縮性

タイトル 品種や樹幹内部位によって異なるスギの収縮性
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 山下 香菜
平川 泰彦
中谷 浩
池田 元吉
発行年度 2010
要約 木材の乾燥で生じる割れや狂いの原因となる収縮率が、スギの品種や樹幹内部位によって異なること、スギでは、細胞壁内のセルロースミクロフィブリルの配向方向に大きく影響されることを明らかにしました。
背景・ねらい 近年、スギなどの造林木が使われるとき、寸法や強度が安定している乾燥材が求められるようになりました。様々なやり方で乾燥した場合に、どのような材料が割れやすく、狂いやすいかを明らかにすることが必要です。また、その理由を明らかにすることは、今後どのような木を育てて利用するかを考えるためにも重要です。
乾燥で割れや狂いが生じる主な原因は、木材の縮み方が方向や部材内の位置で異なるためです。そこで、本研究では、スギの在来品種を用いて、品種や樹幹内の部位によって収縮特性がどのように異なるか、また、なぜ異なるかを明らかにすることを目的としました。
成果の内容・特徴

品種や樹幹内部位による収縮率の違い

スギの在来品種を用いて、樹幹の様々な部分の全収縮率(生材から完全に乾いた材までの収縮率)を比較しました。樹幹の内側と外側、あるいは地上からの高さによって、収縮率が異なることが明らかになりました(図1)。また、品種によって、樹幹内部位による違いが大きいタイプと小さいタイプとがありました。さらに、品種によって収縮率の大きさ自体も異なりました。これらの結果は、同じスギ材であっても、木材の縮み、割れ、狂いが、製材品を切り出す位置あるいは品種によって異なることを示しています。

セルロースミクロフィブリル傾角が収縮率に及ぼす影響

木材の収縮は、方向によって大きさが異なり、接線方向>半径方向>軸方向の順になっています。この収縮の異方性は、主に細胞壁の骨格にあたるセルロースミクロフィブリルの並ぶ向き(ミクロフィブリル傾角)によるものです。本研究では、同じスギであっても、樹幹内部位や品種によってミクロフィブリル傾角が大きく異なり、スギの収縮率の大きさと異方性には、ミクロフィブリル傾角が大きく影響を及ぼすことが明らかになりました(図2)。例えば、細胞分裂して木材になる形成層が若いときにつくられた未成熟材という部分でミクロフィブリル傾角が特に大きい材料では、軸方向の収縮率が大きいために長さ方向の曲がりが生じやすく、ミクロフィブリル傾角が小さい材料では、接線方向と半径方向の収縮率が大きいために、縮み量が大きく、割れやすくなる可能性があります。

ヤング係数と収縮率との関係

構造用材の強さの指標となっているヤング係数(変形しにくさ)は、タッピング法(叩いて音の周波数を測る)で壊さずに調べることができます。ヤング係数は、ミクロフィブリル傾角と関係していますが、スギでは、ミクロフィブリル傾角のバラツキが大きいために、ヤング係数の値にもバラツキがあります。本研究で、ヤング係数と収縮率は相互に関係していることが明らかになりました(図3)。このことは、生材丸太や乾燥前の製材品のヤング係数を測定することによって、収縮率が大きい、つまり割れやすいあるいは狂いやすい材料を選別できる可能性を示しています。今後は、ヤング係数や収縮率に影響を及ぼすミクロフィブリル傾角などの木材の性質が、木材がつくられる段階で、なぜ樹齢や地上からの高さによって異なるのか、遺伝的にどのようにコントロールされているのかを明らかにしていきます。

本研究は、運営費交付金「主要造林木の間伐木の材質特性に及ぼす未成熟材部の特性解明」による成果です。
詳しくは、「K Yamashita et al (2009) Journal of wood science55(1):1-7」、「K Yamashita et al (2009) Journal of wood science55(3):161-168」をご覧ください。
図表1 235206-1.png
図表2 235206-2.png
図表3 235206-3.png
カテゴリ 乾燥 品種

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