タイトル | 無花粉スギの大量生産技術の開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
藤澤 義武 坪村 美代子 植田 守 谷口 亨 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 国民的課題となっているスギ花粉症対策への根本的な対策として、花粉を出さないスギ品種の開発を行い、これを組織培養等によって効率的に大量生産するためのシステムを開発しました。 |
背景・ねらい | スギ花粉症は鼻アレルギー全国疫学調査において、国民の29.8%が花粉症を有すると報告されるなど、国民的課題となっています(平成20年度森林・林業白書)。これに対して各方面から対策が進められており、森林総合研究所でも根本的な花粉症対策として花粉の少ないスギ品種やヒノキ品種を開発するとともに、平成17年には究極の花粉症対策品種として花粉を生産しないスギ品種を開発し、「爽春」と言う名称で品種登録をしました。 この「爽春」はタネで殖やすことができません。そこで、組織培養等によって効率的に大量生産するためのシステムを開発しました。 |
成果の内容・特徴 | なぜクローンで殖やすのか?無花粉スギ「爽春」は花粉を生産しませんが、メバナは着けますし、タネもなります。ところが、このタネで苗を育てても無花粉スギにはなりません。無花粉の遺伝子は劣性遺伝子と呼ばれ、メス親と花粉親の双方から無花粉になる遺伝子をもらった場合だけ無花粉スギとなります。このため、タネで無花粉スギを育てようとすると、花粉親が無花粉スギの遺伝子を持っていることを確かめたうえで交配するなどの手間のかかる方法をとらなければならないうえに、タネの全てが無花粉スギとはならないので、無花粉かどうかを一本一本確かめなければなりません。 これに対して、さし木等のいわゆるクローン苗には親の遺伝子がそのままコピーされるので、苗木は100%が無花粉スギです。ただし、さし木等は手間がかかります。そこで、クローン苗で「爽春」を殖やすために、効率の良い増殖技術の開発を進めました。 組織培養とマイクロカッティング技術開発は、組織培養とマイクロカッティングの双方から進めました。組織培養では、培養室の二酸化炭素濃度を通常の大気の3倍以上に高め、照明は発根の促進などに効果的な特定の波長の光だけを使い、さらには培養のもととなる外植体を培養瓶の中で育てた無菌状態の幼木から採取するなどの技術改良によって発根率を90%以上まで高めることができました。また、植林前には、温室等で外界の環境に慣らす「順化」と呼ばれる作業が必要ですが、これについても野菜等で使われる人工光・閉鎖型苗生産システムと呼ばれる装置を使うことで、順化に必要な期間の短縮や苗が生き残る歩留まり率を向上させることができました(図1)。 一方、さし木技術では、通常用いる30cm~40cmの大きな枝に対して、10cm程度の小さな枝を用いるマイクロカッティング法を採用し、さしつけ床等の改良によって発根率を通常と変わりがないまでに高める技術を開発し、小さな幼木からでも多くのさし木苗を生産できるようになりました(図2)。 これらの技術については「爽春」だけにとどまらず、他のスギ品種への適用が可能です。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | クローン苗 品種 |