タイトル | 精英樹F1の成長量はこんなに大きい! |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
藤澤 義武 河崎 久男 三浦 真弘 山田 浩雄 倉本 哲嗣 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 成長の良い精英樹同士を掛け合わせ、より成長が優れた品種の開発を進めています。中には5年生で樹高が7mに達するほどのすばらしい成長を示すものがあり、下刈省力化等への寄与が期待できます。 |
背景・ねらい | 戦後の造林地が主伐期を迎えるとともに、林野庁が策定した「森林・林業再生プラン」においては木材自給率50%の目標が設定されており、林業用種苗の生産についてもこれに対応できる体制づくりをしておく必要があります。今後、再造林を進めるためには低コスト造林に寄与する種苗の供給が重要です。そこで、成長の優れた精英樹同士の交配によって成長が格段に優れた精英樹F1の開発を進めています。 |
成果の内容・特徴 | 育種の改良効果わが国では、これまでに全国の森林から成長が良く、幹が真っ直ぐな木を精英樹として約9,000個体選んでいます。それらのタネや穂を使って山行苗の生産が行われており、スギとヒノキの山行苗におけるシェアは約7割です。また、検定林と呼ばれる試験林を造成し、成長等の特性を調べ、スギでは従来の苗木に比べ、13%成長が向上していることが明らかになりました。精英樹F1の改良効果現在は、さらに成長を良くするため、成長の良い精英樹同士を交配し育成した苗木でF1検定林(育種集団林)を造成し、そこからより優れた次の世代の精英樹の選抜を進めています。F1検定林はこれまでに88箇所造成しており、それらがどの程度優れているのかを、関東地区と九州地区で比較しました(図)。関東北部地域の5箇所のF1検定林の10年生の林分材積が85m3/haであり、それと同じ地域にある9箇所の精英樹検定林の林分材積が36m3/haでした。また、精英樹検定林の中に対照として植栽されている地スギは24m3/haにしか過ぎず、これを基準にするとF1が355%、精英樹が151%になりました。また、九州地方における同様の比較では、F1検定林の林分材積が106m3/ha、精英樹検定林の林分材積が75m3/haでした。九州は古くからのさし木林業地帯であり、対照は在来のさし木品種なので一般の地スギに比べて優れていますが、これを基準にしても、F1が159%、精英樹が112%になりました。 以上のように成長の良い精英樹同士を交配することで、初期成長が大きく向上することから、低コスト造林に寄与できると考えます。この成果を山行苗生産に活用するために、優良なF1を使った次世代の採種園造成の取り組みが今後必要です。 写真は関東地方の5年生のF1検定林ですが、中には樹高は7mに達しているものがあり、すばらしい成長を示しています。これは成長に関する優れた遺伝子の集積によると推察されます。この再現性が確認できれば、下刈りの省力化に寄与できる初期成長の早い品種の開発も期待できます。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 育種 省力化 低コスト ばら 品種 |