タイトル | 中国でマツノザイセンチュウに強いマツをつくる |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
岡村 政則 生方 正俊 蔡 衛兵 高 景斌 徐 六一 席 啓俊 |
発行年度 | 2010 |
要約 | マツ材線虫病の被害が広がっている中国にて、被害の程度が最も深刻な在来樹種のバビショウ(Pinus massoniana) に対し、中国安徽省とのマツノザンセンチュウ抵抗性育種の共同研究により、我が国以外では初めて抵抗性検定の合格木を作出できました。 |
背景・ねらい | わが国で猛威を振るっているマツ材線虫病の被害が、中国、韓国、そしてポルトガルでも発生しています。中国では1982年に南京で被害が報告されて以降、中南部の各省に広く分布する有用樹種であるバビショウ(Pinus massoniana)に被害が拡大しています。被害対策の一環として、2001年からマツノザイセンチュウ抵抗性育種が開始されている安徽省では、その森林面積360万ha(森林率は、26.1%)の39.0%を占める140万haがマツ林で、その大半がバビショウです。日本のマツに関する抵抗性育種の技術(図)を既に開発していた森林総合研究所は、中国側の強い要請を受けて、抵抗性育種研究の開始当初から技術協力を行ってきました。 |
成果の内容・特徴 | マツ材線虫病と抵抗性育種カミキリによって運ばれた長さ約1mmのマツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入し、内部の組織を破壊することでマツが枯れます。マツノザイセンチュウの原産地であるアメリカのマツは抵抗性がありますが、その他の地域では抵抗性のないものが多く、抵抗性のあるマツをつくることが必要です。抵抗性のある木を選ぶには、マツノザイセンチュウを人工的に接種して検定します。マツノザイセンチュウ選び接種するマツノザイセンチュウの病原力が弱いと、抵抗性が弱いマツも選ばれることになります。接種するマツノザイセンチュウには、強い病原力と高い増殖性が求められます。そのため、安徽省内各地の被害地からマツノザイセンチュウを集め、接種用のマツノザイセンチュウを選び出しました。バビショウの抵抗性育種写真1はマツ材線虫病の被害林分です。このような被害地域で、323本の母親を選び種子を採取し、44,000本の実生苗木を育て、2年目と3年目の夏にマツノザイセンチュウを接種し、1,209本が生存しました。つぎに、クローン苗による検定を行います。2009年は、生存個体からつぎ木(写真2)によって育てた303本のクローン苗にマツノザイセンチュウを接種し(写真3、写真4)、301本の合格木を得ました。これは、わが国以外では初めての成果です。 今後の取り組みクローン苗による検定の必要な生存個体が906本残っていますので、今後2年間かけて、つぎ木と接種検定を行います。合格木はさらに増えることが期待されます。一方、被害地では植林用の抵抗性のある苗の供給が求められています。苗木生産用の種子は、優良な母樹を植栽、、管理している採種園より供給されますが、今回合格したものを用いた採種園の造成が既に開始されています。 なお、この取組みは、森林総合研究所、国際協力機構及び中国安徽省によるものです。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
カテゴリ | 育種 クローン苗 抵抗性 抵抗性検定 苗木生産 |