地すべり性崩壊の発生危険斜面を探る

タイトル 地すべり性崩壊の発生危険斜面を探る
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大丸 裕武
村上 亘
黒川 潮
発行年度 2011
要約 航空機レーザー測量や年代別の空中写真・衛星画像を用いて地すべり性崩壊の危険性が高い斜面を探し出す方法を開発しました。
背景・ねらい 近年、西日本を中心に記録的な大雨によって地すべり性崩壊*が多く発生しており、その予測手法の開発が求められています。地すべり性崩壊の発生には斜面の重力性変形(斜面の一部が自分の重みで変形する現象)が深く関わると考えられています。本研究では近年登場した航空機レーザー測量技術を用いて、地すべり性崩壊が発生しやすい斜面の地形的特徴を明らかにするとともに、地震時に斜面の重力性変形が大きく進行する現象を明らかにしました。また、大規模な地すべり性崩壊が発生する前には前兆的な地形変化が見られる場合があることを明らかにしました。これらの現象は地すべり性崩壊が発生しやすい斜面を探しあてる上で、重要な鍵となります。

*地すべり性崩壊
山地の比較的深いところから、大雨や地震によって斜面が地すべりの様に大規模に崩れる現象。
成果の内容・特徴

地形から地すべり性崩壊危険地を探る

最近記録的な大雨が各地で観測されるようになり、地下深くの岩盤にまで達する地すべり性崩壊の発生が目立つようになりました。今後、地球温暖化の進行によって各地で大雨が増えてこのような崩壊が多発することが懸念されるため、その予測手法の開発が急がれています。
地すべり性崩壊が発生するような険しい山地は、隆起する一方で自らの重さによってつぶれるように変形するため、変形の際にできたひび割れがいたる所にあります。地すべり性崩壊の多くは、多数の割れ目が入って脆くなった岩盤で発生するため、割れ目が作る微地形を探しあてることで、崩壊危険度が高い山地を選び出すことが可能です。特に、山地の一部が自重で沈み込むことで形成される細長い凹地(線状凹地)は、斜面の重力性変形を知るための重要な手がかりになります。近年では、山肌の形状を詳しく把握出来るレーザー測量技術によって、空中写真では見えなかった樹冠下の地形の状況を詳しく観察できるようになりました。図1は長野・新潟県境付近の蒲原山の森林内にみられる線状凹地で、山体が尾根の裏側に達する線状凹地を境にして、東方の姫川側に移動していることがわかります。
また、航空機レーザー測量を繰り返し行うことで、時間とともに斜面の変形が進むようすを捉えることも可能になりました。図2は2008年の岩手・宮城内陸地震によって、尾根付近にあった線状凹地の中で新たに亀裂が発生した例です。地震前にみられた線状凹地の中で、地震後に新たな亀裂が発生していることがはっきりとわかります。これまで、山体の重力変形がいつ起きるかについては不明の点が多かったのですが、この結果は地震時に重力変形がとくに進行することを意味します。山体の重力変形現象には、スローモーション映像のような連続的な動きだけでなく、地震時だけに動くパラパラマンガのような断続的な動きもあることがわかりました。

崩壊の前兆

重力性変形による傷跡は山地の各所にあるものの、実際にはそのような地形があってもすぐには崩壊しない斜面が大部分です。災害予測のためには、危険な斜面をさらに絞り込む必要があります。そこで、多くの地すべり性崩壊が見られる静岡県の大井川流域の山地について、過去60年間の変化を解析したところ、地すべり性崩壊が発生した斜面のふもとでは、崩壊が起こる前に小規模な崩壊が発生した斜面(図3,4)がたくさん見つかりました。このように、地すべり性崩壊の中には一気に崩壊するのではなく、ほころびが徐々に拡大する形で段階的に崩れていくものが見られます。こうした前兆現象を見つけて危険斜面をさらに絞り込むことにより、地すべり性崩壊危険地の予測精度を大きく向上させることができます。

本研究は「予算区分:林野庁委託費、課題名:降雨量分布予測手法を取り入れた山地災害危険地予測技術の開発」、「予算区分:林野庁委託費、積雪地帯における土砂災害の発生危険度予測手法の開発調査」等の成果を用いて行いました。

参考文献
大丸裕武 (2008) 年代別空中写真からみた深層崩壊発生斜面の動態-大井川中流域の崩壊地を例に-.水利科学,302,72-87.
Murakami, W., Daimaru, H. and Matsuura, S. (2008) Characteristics of Landslides in the Gamaharazawa Area in the Northern Fossa-Magna Region by LiDAR DEM.Proceedings of the International Conference on Management of Landslide Hazard in the Asia-Pacific Region,282-291.
図表1 235224-1.png
図表2 235224-2.png
図表3 235224-3.png
図表4 235224-4.png
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