持続的な森林資源管理を成り立たせる条件は?

タイトル 持続的な森林資源管理を成り立たせる条件は?
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大住 克博
奥 敬一
伊東 宏樹
発行年度 2011
要約 近畿地方の近代以前の森林資源利用の事例を調べ、持続的に森林資源を利用するためには、社会的規制や資源管理技術が適用された場合に成り立ってきたことを明らかにしました。
背景・ねらい 自然と調和した持続的な社会のあり方を探索するために、近代以前の日本社会では、どのような場合に持続的な森林資源の利用が成り立っていたのかを、近畿地方における事例研究を集めて分析しました。その結果実際には資源利用が破綻した事例も多く、近代以前の日本社会が必ずしも自然と調和的ではなかったことがわかりました。一方、持続的な森林資源利用が成立していた所では、社会的規制や森林管理技術が導入されていることが多く、伝統的社会の持つ知恵の有効性が示唆されました。この研究で、持続的資源利用の成立と社会の関わり方の関連を整理したことにより、国内外の地域社会が持続的な森林管理を実現していく方途を考える上で、より客観的な議論ができるようになりました。
成果の内容・特徴

伝統的な日本社会と持続的な森林資源管理

近代以前の日本社会には自然と共存した暮らしがあり、自然資源を破綻させることなく持続的に利用してきた、そしてそれを実現するための伝統的な知恵を備えていたということが、よく語られます。そのような伝統的な森林資源管理を解析し、自然と調和した持続的な現代社会のあり方を考えるために過去の事例から有益な情報の抽出を目指しました。

持続が実現された例も破綻した例もあった

この日本の社会が持続的に自然資源を利用してきたという話は、もっぱらイメージとして語られてきたものです。そこで、このイメージの当否を検証するために、近畿地方の中世から近代までの様々な時代における森林資源利用20事例について、様々な研究報告をもとに持続性を評価しました。その結果、20事例の中には、森林資源の持続的な利用に成功したと推測される事例も、失敗したと推測される事例もありました。つまり、日本の社会は自然と調和的であったとは、一概にはいえないようです。

管理が大事

それでは、どのような場合に、持続的な資源利用が成り立っていたのでしょうか?まず、地域外部の者が利用に関わる場合には、地域住民が利用する場合よりも、森林資源が破綻しやすいのではないかと考えてみました(図1)。しかし、地域の外部者が森林資源利用に関わることと資源利用の破綻は必ずしも結びついていませんでした。次に、資源利用に関わる社会的規制の整備が、持続的な資源利用につながっていたのではないかと考え、両者の関連を調べました。その結果、資源の収穫方法や収穫が許される区域などについて、藩の布告や村掟などによる規制を敷いていることが確認できた9事例では、すべて持続的利用が成り立っていましたが、確認できなかった11事例では、うち7事例で資源の枯渇が認められ、社会的規制の有効性が考えられました。
さらに同じ20事例について、造林技術などを用いた積極的な森林管理が行われていたかどうかを検討しました(図2)。持続的な資源利用が行われていたと考えられた事例のほとんどは、里山の柴山や薪炭林、人工林などでした。つまりそれらは、萌芽の良好な発生を考慮した伐採や植林、除伐などの、森林の再生を積極的に促す森林管理技術の実行により、人為的に誘導された森林だと考えられるのです。
このように、持続的な森林資源利用の多くは、何らかの社会的規制や森林管理技術の導入により成立し、支えられてきたことが示唆されました。

成果の利活用-利活用の実績

持続的資源利用の成立と社会の関わり方の関連を整理したことにより、国内外の地域社会が持続的な森林管理を実現していく方途を考える上で、より客観的な議論ができるようになりました。しかし、扱った地域が限られていることから、結論の一般化には、今後さらに事例解析を積み重ねていくことが必要です。

本研究は「予算区分:政府外受託、課題名:日本列島における人間-自然相互関係の歴史的・文化的検討」による成果です。

参考文献
大住克博・湯本貴和 (編).2011.里と林の環境史文一総合出版,東京.284pp
図表1 235226-1.png
図表2 235226-2.png
図表3 235226-3.png
図表4 235226-4.png
カテゴリ 管理技術

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