タイトル | 中国の森林、林業、木材産業 ~その姿と日本への影響~ |
---|---|
担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
堀 靖人 平野 悠一郎 塔村 真一郎 村田 光司 嶋瀬 拓也 天野 智将 山田 茂樹 立花 敏 山根 正伸 大塚 健司 陸 文明 呉 鉄雄 |
発行年度 | 2011 |
要約 | 急激な経済成長により中国の木材産業や貿易が拡大し、世界の木材貿易における中国の位置づけが高まっています。木材輸入をめぐる競合、日本への製品輸出などにより、わが国の林業、木材産業への影響は今後も続くと考えられます。 |
背景・ねらい | 世界の木材貿易における中国の位置づけが急激に高まり、貿易を通して日本林業、木材産業にどのような影響が及ぶかについて情報収集と分析の必要が高まっています。そこで中国の木材貿易の拡大の内実とそれが日本に及ぼす影響を調査しました。中国が木材貿易を拡大させた要因は、林業政策を転換して国内の森林資源を保護する一方で、国内需要をまかなうために木材輸入を拡大させたこと、各種の規制緩和により中国の木材産業は輸出産業に成長したことだと考えられます。経済のグローバル化にうまく乗ることができたわけです。中国の経済成長が続けば、中国の木材貿易での優位性は継続し、木材輸入での競合、木材製品の日本への輸出を通じて影響は今後も続くことが分かりました。 |
成果の内容・特徴 | 研究の背景・目的中国はここ10数年間、高い経済成長を維持し、世界貿易の中で重要な地位を占めています。木材部門も同様で、木材貿易を通じて日本の林業、木材産業へも影響を及ぼしています。しかし、中国の森林、林業、木材産業の情報は十分ではありません。そこで本研究は、日本の林業、木材産業の発展を考える上で不可欠な中国の木材産業や木材需要の動向を現地調査を踏まえて分析することを目的としました。中国の木材貿易の現状中国の木材貿易拡大の背景には、中国経済の著しい成長に加えて、2000年前後に本格化した伐採を抑制する政策があります。この結果、国内供給量が減少し、それは主にロシアからの輸入材でまかなわれました。ロシア材輸入の拡大は中ロ国境問題が1990年代に解決に向かったことも大きな要因でした。中国の木材貿易の特徴として、丸太、原板といった原料輸入量の拡大と合板をはじめとした木材製品の輸出拡大があげられます。その背景として中国国内の木材産業の発達がありました。 日本では2007年以降のロシア丸太輸出の関税率の引き上げ、2007年の日本の住宅不況、2008年のリーマンショックなど大きな変化がみられました。その中で、中国の木材加工業はロシア材調達において丸太輸入から原板輸入へ転換し、同時にロシア材依存から北米材やニュージーランド材へと分散化をはかっていることがわかりました。製品販売は、品質への要求が厳しい日本市場を避け、欧米州市場、さらには中国国内市場へと重点を移していることがわかりました。 このように、中国の木材産業は外部条件の変化に柔軟に対応したといえます。その理由として、人件費が安く機械や設備、資本をあまり必要としないため、企業の参入障壁が低いことがあげられます。多くの中小企業が参入することで生産量を一気に増やすことができ、逆に需要が後退した場合はこうした企業が撤退することで、容易に需給調整が可能であったと考えられます。原料調達においては、世界各地に張りめぐらされた華僑ネットワークによって世界中から安価な原料の調達が可能であることも中国の木材産業の柔軟性の理由と考えられます。 将来予測と日本の対応今後も、中国の経済成長が続けば、中国の木材貿易での優位性は継続し、日本では輸入木材への依存度が減少し、国産材需要が増します。中国の経済成長が停滞すると、これとは逆のことが予測されます。なお、中国は現在、世界の工場から世界の市場へと変化する転換期にあると考えられます。日本が得意とする高品質の住宅部材を中国市場へ輸出することも長期的な視点で検討していく必要があります。本研究の成果は日本や中国での学会報告、シンポジウムやワークショップ、公刊図書として発信しており、業界、行政、研究部門において幅広い利用が期待されます。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 加工 輸出 |