タイトル | 急傾斜地に森林作業道をつくる |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
梅田修史 田中良明 鈴木秀典 山口 智 |
発行年度 | 2011 |
要約 | 間伐など森林の手入れに使われる森林作業道について全国8路線を調査・分析した結果、4つの作設パターンがあることがわかりました。それぞれの特徴を明らかにし、森林作業道作設の手引きとしてまとめました。 |
背景・ねらい | 間伐など森林の手入れに使われる森林作業道の適切な工法を提示するため、全国8路線を調査したところ、切土と盛土による通常の作設工法に加えて、地山と一体化するように盛土を行う工法、丸太による木製工を用いる工法等、いくつかの工法がありました。それぞれの工法について、路線の配置、道を構成する土質、及び路面の強さを分析した結果、特に急傾斜の森林においては、急斜面をなるべく避けて道を配置する傾向があること、路肩側までしっかりと土を締め固めてつくられていることが明らかになりました。いずれの工法も各地の地形、土質に適応させながら編み出されてきた工法であり、これらの工法の特徴やその評価方法を森林作業道作設の手引きとしてまとめました。 |
成果の内容・特徴 | 森林作業道とは森林から伐り出された木材は、林道や公道を経て市場に供給されます。こうした森林路網の中で最末端に位置し、実際の木材の伐採搬出に使われるのが森林作業道です。間伐等によって森林整備を進めていくためには、こうした森林作業道が低コストで作れ、崩れにくく、維持管理が容易でなければなりません。そこで、全国8カ所の森林作業道において、周辺の地形、路線の配置、道を構成する土の締固め具合の性質、道の表面の強さ等を調べました。地形傾斜と切土、盛土の関係我が国の森林は、傾斜地に広く分布しています。傾斜地で横断方向に平らな道を作るためには地山を切り取らなければなりません。あまり多くの切取りを行うと切土法面が崩壊しやすくなるので、切取りの高さはできる限り抑えなければなりません。仮にその高さを1.5mに制限すると、幅員が2.5~3.0mの道をつくるためには、傾斜が30度以上の急傾斜になると、盛土を行う必要があります。調査の結果、森林作業道の作り方には、この通常の切土、盛土による工法(図-1a)に加えて、盛土が地山になじみやすくなるように、盛土の最下端の高さまで地山を掘削して均等に締固める工法(同b)、盛土の最下端と路肩に丸太を用いて構造物を構築する工法(同c)、当初は小さな幅員の道を作設して、何年もかけて徐々に道を拡幅していく工法(同d)がありました。いずれも、土と木を主体として作られており、低コストで作られた道だといえます。急傾斜地における道づくり平均傾斜が30度を超える急傾斜地では、作業道は傾斜の比較的緩い斜面に配置される傾向があることがわかりました。平均傾斜が30度以上の地域の例では、30度よりも緩やかな斜面が森林面積全体の35%しかありませんでした。その35%に全路線延長の52%が作られていました。さらに、急傾斜地につくられた作業道を構成している土と路面の強さの関係を調べたところ、急傾斜地につくられた作業道は、そもそも締固めに適した土であることが多いこと、さらに路面の締固めが路肩部分にいたるまでしっかり行われていることがわかりました。また盛土は、その表面をすみやかに緑化して浸食を防ぐ必要があるのですが、それも林地に分布する表土を盛土の法面に用いて在来植生を利用した緑化を促進する工夫がなされていました(図-1b、図-2)。このように森林作業道を適切に作るためには、できるだけ緩斜面に配置すること、急傾斜地では土の性質を考慮すること、構造物は丸太等コストのかからないものを選ぶこと、在来種による緑化をはかることが重要です。これらの調査によって得られた工法とその評価法を、全国の林業や森林土木の技術者に活用してもらうために、森林作業道作設の手引きとして取りまとめました。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 傾斜地 コスト 低コスト 評価法 |