集成材の長期維持管理のための補修技術の開発

タイトル 集成材の長期維持管理のための補修技術の開発
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 平松 靖
宮武 敦
新藤 健太
清水 庸介
中島 正夫
宮林 正幸
発行年度 2011
要約 集成材建築物を長期にわたって維持管理するためには、集成材に生じる経年劣化を補修する技術を確立する必要があります。本研究では集成材の接着層の劣化を補修する技術を開発しました。
背景・ねらい 集成材建築物を長期にわたって維持管理するためには、集成材に生じ得る経年劣化に対する補修技術を確立する必要があります。本研究では集成材の接着層の割れ、はく離といった劣化に対する補修技術の開発を目的として、意図的に接着剤を塗布しない積層面を設けた集成材を作製し、それらに種々の補修を行い、強度性能を評価しました。そして、集成材の接着剤を塗布していない積層面に対して、「エポキシ樹脂を注入する方法」、「全ねじボルトを挿入し、そのまわりにエポキシ樹脂を充填する方法」、「木ねじを斜め打ちする方法」のいずれかの補修を行うことにより、健全な試験体と同程度まで強度を回復させられることを明らかにしました。
成果の内容・特徴

集成材建築物の維持管理

日本国内で使われている築年数25~51年の集成材建築物の健全度調査報告には、一部の集成材に、腐朽菌やシロアリによる生物劣化や、接着層の割れやはく離といった劣化が見られたと記されています。集成材建築物を長く、安心して使えるよう維持管理していくためには、それらの劣化に対する補修技術を確立することが重要です。

接着層の劣化

構造用の集成材の製造に使用される接着剤は日本農林規格(JAS)で定められ、その接着耐久性は促進劣化試験などで検証されています。しかし、実際の建築物では、長期間、屋外で使用されたり、温湿度の変化が大きな過酷な環境下で使用されたりすることによって、集成材の接着層に割れやはく離といった劣化が生じることがあります。

接着層の劣化を想定した集成材試験体の強度試験

接着層の劣化は集成材の強度にどう影響するでしょうか。実際に接着層を劣化させた集成材を実験的に作製することは難しいので、本研究では、接着層の劣化を想定して、接着剤を塗布していない積層面のある集成材を作製し(図)、強度試験を行いました。次に、接着剤を塗布していない積層面に対して「エポキシ樹脂を注入する方法」、「全ねじボルトを挿入し、そのまわりにエポキシ樹脂を充填する方法」、「木ねじを斜め打ちする方法」、「ラグスクリューを締め込む方法」の4種類の補修を行い(図)、強度試験を行いました。

有効な補修技術は?

試験の結果、接着剤を塗布していない積層面のある集成材の強度は、接着剤を塗布していない面積が増えるに従って低くなることがわかりました。また、ラグスクリューの締め込みは効果が低く、接着剤を塗布していない積層面に対して、「エポキシ樹脂を注入する方法」、「全ねじボルトを挿入し、そのまわりにエポキシ樹脂を充填する方法」、「木ねじを斜め打ちする方法」のいずれかの補修を行うことにより、健全な試験体と同程度まで強度を回復させられることがわかりました。

研究成果の活かし方

集成材建築物において、集成材に働く力は多様です。今回の成果を踏まえつつ、強度試験や部材同士を組み合わせた構造試験のデータを蓄積し、さらに補修の作業性の検証を行う等により、集成材建築物の長期維持管理手法の確立をめざします。

詳しくは、清水ら(2010)日本建築学会大会学術講演梗概集 C-1 構造Ⅲ、15-16、平松、清水(2010)住宅と木材、No.387、18-23、24-29をご覧下さい。
図表1 235234-1.png
カテゴリ 経年劣化

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