タイトル | CO2ヒートポンプによる高効率で環境にやさしい木材乾燥機 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
齋藤 周逸 松村 ゆかり 大平 辰朗 松井 直之 信田 聡 加藤 之貴 池田 潔彦 渡井 純 町田 明登 門脇 仁隆 加藤 雅士 西田 耕作 |
発行年度 | 2011 |
要約 | CO2ヒートポンプを木材乾燥機に応用することにより、従来のフロン冷媒ヒートポンプでは難しかった70℃以上の加熱が可能で、かつエネルギーコストを抑える高効率の木材乾燥機を実用化しました。 |
背景・ねらい | 低炭素社会にむけて、エネルギー消費を少なくする高効率技術の開発・普及が求められています。木材の人工乾燥分野でもエネルギー消費の削減が必要です。そこで省エネルギー技術として民間企業で開発されたCO2冷媒のヒートポンプ装置を木材乾燥機に応用する研究開発を行い、高効率の木材乾燥加工の実用化に成功しました。 この乾燥機の特長は、従来のヒートポンプ加熱方式では不可能であった 70℃以上の空気加熱が可能であることと、高効率性で低環境負荷であることです。例えば、一般住宅約100軒分にあたる木材を乾燥処理する場合、従来の灯油ボイラ加熱と比べると、エネルギーコストは年間約50%減、二酸化炭素排出量は年間約70%減に削減できます。 |
成果の内容・特徴 | 乾燥木材が求められています木造住宅用の骨組みを構成する構造用木材は、消費者の安全安心指向の流れに沿って、強度や寸法を明示する動向にあります。強度や寸法は木材内部の水分によって変化します。構造用木材は強度が求められるので日本農林規格等で定められた基準に合わせて乾燥加工する必要があります。木材の人工乾燥まとまった量の構造用木材を生産する工場では、箱形の乾燥室と加熱機器から構成された木材乾燥機を用いて木材を人工的に乾燥しています。木材乾燥機では、内部の温度と湿度を調整しながら木材を一定期間で所定の含水率に乾燥することができますが、木材を加熱するためのエネルギーは大きくなりがちです。ヒートポンプとはヒートポンプとは、温度の低いところから温度の高いところへ熱を移動させる仕組みのことです。これによって燃焼を伴わずに加熱が行えます。この加熱は、冷媒と呼ばれる化学物質の加圧・減圧による液化と気化の相互変化によって生じる発熱や吸熱を応用しています。このヒートポンプ加熱方式は低炭素社会のキーテクノロジーと言えます。なぜなら、ヒートポンプ加熱方式は、必要なエネルギーの3~5割で他の加熱方式と同等の加熱量を生み出すからです。 従来のヒートポンプは地球環境に悪影響を与えるフロンガス冷媒が使用されていました。近年の技術開発により、自然冷媒であるCO2ガスが冷媒としてヒートポンプに応用できるようになりました。 現在、このCO2ヒートポンプシステムは、年々大型化され、今回の研究開発に至ったように産業用として応用可能な規模になりました。 本研究の特徴は、木材の乾燥に使われる乾燥室内の空気加熱の方法に図1のCO2ヒートポンプ装置を応用したことです。 開発乾燥機の特徴主な成果は、第一に、従来のヒートポンプ加熱方式では不可能であった70℃以上の空気加熱を補助熱源なしで可能としたことです。第二に、従来よりも高効率で環境負荷が低いことです。図2のように、一般住宅約100軒分にあたる木材を乾燥処理する場合、従来の灯油ボイラ加熱と比べると、エネルギーコストは、年間約50%減、二酸化炭素排出量は年間約70%減まで削減できました。また、図3の木材乾燥システムでは、開発した乾燥スケジュールコントロールソフトにより温湿度の自動運転が可能です。なお、湿度の調整に必要な水分は木材中の蒸発水分を利用し、残りの凝縮水からは精油成分が副産物として回収可能です。実用化された場合の装置価格は当初割高と想定されますが、高効率によりエネルギーコストが抑えられるので、初期投資高を3年程度で回収可能と考えています。導入に適した規模の乾燥工場は、4~6基の乾燥機で年間5000m3程度の乾燥材を生産目標としている事業所を想定しています。 本研究は、農林水産技術会議、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業、「ヒートポンプを応用した低環境負荷型木材加工装置の開発」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 加工 乾燥 コスト 省エネ・低コスト化 ヒートポンプ |