樹木の香りで生活環境空間を浄化する

タイトル 樹木の香りで生活環境空間を浄化する
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大平 辰朗
松井 直之
金子 俊彦
田中 雄一
発行年度 2011
要約 環境汚染物質の除去活性の高い樹木精油を見出し、それを最も効果的に噴霧する方法を開発しました。また、精油を大量に抽出するために減圧式マイクロ波水蒸気蒸留法を開発しました。
背景・ねらい 我々の生活環境には多種類の環境汚染物質が存在しており、それらが原因で引き起こされる疾病が問題になっています。我々は二酸化窒素などの環境汚染物質に対して強力な除去活性を示す精油成分とテルペン類を樹木の葉や材から見出しました。さらに、これらの物質の機能を最大限発揮させるための実用的な空間への噴霧法を開発しました。また除去活性の高い精油成分の大量供給を可能にするために、省エネ型の減圧式マイクロ波水蒸気蒸留法を開発し、一般的な水蒸気蒸留方式に比べて4分の1程度に抽出時間を短縮できたほか、抽出効率を高めることにも成功しました。
成果の内容・特徴

省エネルギー型精油採取法(減圧式マイクロ波水蒸気蒸留法)を用いた精油成分の大量供給

・熱源にマイクロ波を利用
一般的な水蒸気蒸留法による精油採取では、植物体に大量の水を加えます。そのため、採取後に大量の廃液が残り、その処理の問題が生じます。本装置は、マイクロ波により植物体に含まれる水分を均一かつ効率的に加熱し、蒸留することが可能です。そのため短時間で蒸留を行うことができ、消費エネルギーを従前から用いられてきた水蒸気蒸留法の4分の1程度まで低減することができました。また水分を添加する必要がないので、採取後の廃液が大幅に減ります。さらに残渣は採取前よりも乾燥した状態になっており、利用する上でも取り扱いが容易になります。
・減圧下での蒸留
一般的な精油成分の採取法である水蒸気蒸留法では、100℃前後に加熱された水蒸気が用いられるため、熱に弱い精油成分は変質してしまいます。その点ここで開発した装置は減圧下で操作を行うため、蒸留が起こる温度を大幅に低下させることができ、変質が抑えられます。さらに本装置では、減圧条件を調整することが可能で、得られる精油成分の組成を変化させることができます。
・実証規模での抽出に成功
本法により、精油含有量の多いトドマツ葉(約500kg)から精油 4L、微香を有する蒸留水画分100Lをわずか100分で採取することができました。精油採取に要する消費エネルギーを比較すると、一般的な水蒸気蒸留法の4分の1程度であり、製造コストの低減できる実用的な生産が可能になりました(図1)。

環境汚染物質 “二酸化窒素” の除去効果の高い精油成分

二酸化窒素は大気汚染防止法にも定められている環境汚染物質であり、我々の健康にも影響がある有害物質です。揮発した精油成分は二酸化窒素(7ppm)を除去できます。その効果を調べると、トドマツ葉油が最も高く、次いでヒノキ葉油、ユーカリ葉油、スギ葉油の順に効果が高いことがわかりました(図2)。さらにこれらの精油成分の中から、除去効果の高い物質としてγ-テルピネン、β-フェランドレン、ミルセン、オシメンなどが見出されています(図3)。
これらの物質の機能を最も効果的に発揮させるために、加熱放散式などの空間への噴霧法を開発しました。

精油成分は未利用の葉などの林地残材にも含まれています。したがって精油成分の利用が拡大することにより、林地残材の有効利用が可能となります。
また、これらの成果を活用することにより、我々の生活環境空間の浄化に役立ち、快適な生活環境の創造が期待できます。
抽出法および除去剤については、特許出願中です。

本研究は、(独)科学技術振興機構の革新的ベンチャー活用開発事業「樹木精油を利用した環境汚染物質の無害化剤」により実施しました。

参考資料
1)大平辰朗、松井直之、金子俊彦、田中雄一 (2010)、 AROMA RESEARCH、11(2):148-155
2)大平辰朗 (2011)、においかおり環境学会誌、42(1), 27-37
図表1 235239-1.png
図表2 235239-2.png
図表3 235239-3.png
カテゴリ 乾燥 コスト 省エネ・低コスト化

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