葉の水分保持に関与するオオムギのEibi1遺伝子の単離と機能解析

タイトル 葉の水分保持に関与するオオムギのEibi1遺伝子の単離と機能解析
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2008~2012
研究担当者 Chen G
小松田隆夫
Ma J
Nawrath C
Pourkheirandish M
田切明美
Hu Y
Sameri M
Li X
Zhao X
Liu Y
Li C
Ma X
Wang A
Nair S
Wang N
宮尾安藝雄
佐久間俊
山地直樹
Zheng X
Nevo E
発行年度 2011
要約 葉のクチクラ層の構造が崩れ水分を保持できないオオムギの突然変異体eibi1を解析し、その原因がHvABCG31遺伝子の機能消失によるものであることを発見した。イネでも、対応する遺伝子であるOsABCG31遺伝子が機能消失するとオオムギ同様、葉の水分を保持できなくなり乾燥耐性が著しく低下することが分かった。
キーワード ABCトランスポーター、クチクラ層、乾燥耐性、eibi1
背景・ねらい 世界では干ばつ被害がしばしば発生し、また、砂漠化の進行も問題になっている。農作物においては、乾燥による水分の欠乏は生長や収量に大きな影響を及ぼす要因であり、乾燥耐性の付与は品種改良の目標の一つである。陸上植物は、体の表面にクチクラ層(一般名はキューティクル)という構造を発達させ、体からの水分損失を防いでいることが知られているが、これまでにオオムギでは、切り取った葉がわずか数十分でカラカラに乾燥する自然突然変異体eibi1.bが見いだされていた。葉は一般に気孔とクチクラ層の両方から徐々に水分を失うが、この変異体では気孔は正常に機能することから、クチクラ層に何らかの欠陥があり、そのため水分を急速に失うことが明らかにされていた。本研究では、eibi1突然変異体の原因遺伝子の単離とその機能解明に取り組んだ。
成果の内容・特徴
  1. マップベースクローニングによりeibi1.b突然変異体の原因遺伝子を単離した(図1A)。この遺伝子(以下ABCG31遺伝子)は細胞内での物質輸送に関係すると考えられるABCG31タンパク質をコードし、eibi1.b突然変異体ではABCG31遺伝子の機能が消失していた。同じ遺伝子の人為突然変異体eibi1.cにおいても水分損失と矮性的生育を示した(図1B、C)。
  2. イネにおけるトランスポゾンTos17の挿入遺伝子破壊系統群から、ABCG31遺伝子が破壊されたイネ2系統を選抜した。このイネはオオムギ変異体と同様に、葉の水分を保持できなくなり乾燥耐性が著しく低下していた。
  3. オオムギおよびイネの変異体の葉のクチクラ層を詳細に観察したところ、変異体ではクチクラ層の構成成分であるクチンの量が減り、それに伴い、クチクラ層の厚みが約1/3に減っていた。これらの結果を踏まえ、ABCG31遺伝子がクチクラ層の形成と水分の保持に重要な役割を果たすことが判明した。
  4. ABCG31遺伝子に対応する遺伝子は、単子葉植物および双子葉植物にわたって、タンパク質のサイズおよび推定アミノ酸配列ともよく保存されていた。一方、クチクラ層の存在が不明瞭な海藻である緑藻では、対応するABCG31タンパク質の相同性は35%と低かった。この結果は、ABCG31遺伝子の進化により植物がクチクラ層を形成して乾燥耐性を獲得し陸上に進出したという可能性を示すものである。
成果の活用面・留意点
  1. 単離した遺伝子は、陸上植物に必須の組織であるクチクラの形成機構を解明する糸口になるとともに、植物が陸上に移行した進化過程の解明に寄与する。
図表1 235250-1.jpg
図表2 235250-2.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h23/nias02301.htm
カテゴリ 大麦 乾燥 品種改良 輸送

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