タイトル | 針葉樹人工林を広葉樹林へと誘導する |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
田中 浩 正木 隆 佐藤 保 山中 高史 田内 裕之 新山 馨 吉丸 博志 |
発行年度 | 2012 |
要約 | 広葉樹林への誘導技術を高度化するため、林冠デザインモデルによる林冠の制御による天然更新促進や、菌根菌の接種により成長を促進させたシイ・カシ苗作成など、新たに開発した技術を盛り込み、「広葉樹林化ハンドブック2012」を作成・発行しました。 |
背景・ねらい | 公益的機能の発揮をめざして、針葉樹人工林を広葉樹林へと誘導する技術開発を行いました。誘導のための技術としては、林冠デザインモデルによる林冠の制御による天然更新促進技術や、シイ、カシ類の簡易な菌根菌感染苗作成技術を開発しました。また、遺伝子資源の保全に配慮した地域性種苗の確保技術を開発しました。更に、人工林から広葉樹林へと誘導することによる公益的機能の変化を評価しました。広葉樹林化を現場で有効に進めるために、こうした成果に加えて、誘導化を検証するシステム、誘導施業モデルを盛り込んだ「広葉樹林化ハンドブック2012」を作成し、森林管理・林業の現場への普及を図りました。 |
成果の内容・特徴 | 広葉樹林化の必要性戦後植栽された約1000万ha弱の針葉樹人工林のうち、手入れ不足になってしまった林分や経済的に成り立たない林分については、今後、生物多様性の保全や、水土保全などの公益的機能を持続的に発揮できるよう、混交林、広葉樹林へと誘導・育成することが求められています。林冠の制御抜き伐りによって林冠を制御することで、林内の光環境がどのように変化し、林内の天然更新稚樹の成長に影響を及ぼすかを、各地の人工林での事例を収集するとともに、林冠デザインモデルを作成し、解析することによって明らかにしました。同じ本数25%の抜き伐りでも、樹高の3分の1幅(5m四方)のギャップをたくさん作るのでは、高木性樹種の更新適地ができても、5年後には樹冠が閉鎖し、耐陰性の高い高木種以外は生育できません。樹高よりやや大きい幅(20m四方)のギャップをいっぺんに開けると、逆にパイオニア樹種や低木にとってよい光環境が5年後も続き、低木やキイチゴ類などとの競争に弱い高木種の更新が困難になることがわかりました(図1)。このような傾向は、事例研究からも裏づけられています。適切な更新環境の維持のためには、適当な抜き伐りサイズと抜き伐りの継続による適切な林冠の制御が必要です。菌根菌の利用新規に開発した簡易接種法で、菌根菌のツチグリ、ニセショウロを接種したシイ・カシの苗木は、非接種苗に比べて成長が良く、人工林伐採跡地に実際に植栽した実験でも成長が促進されました。植栽する広葉樹苗の成長が困難な場所で、苗を素早く成長させるために使える技術です。地域性種苗の利用のためにシラカシ(図2)やアラカシのように、多くの樹種には遺伝的な性質に地域間の違いがあります。異なる地域から持ち込んだ遺伝的な性格の異なる苗木の植栽は、成長の不良、交雑による遺伝的な撹乱をもたらす恐れがあるので、できるだけ植栽する地域の苗を使うために、種子や苗の確保技術を開発しました。広葉樹林化の施業にむけて:広葉樹林化ハンドブック2012上に述べた成果の他、抜き伐りによって広葉樹が林内に更新することによる表土保全機能の向上を評価する手法やその実際の結果の紹介、広葉樹林化への手順などを盛り込んだ「広葉樹林化ハンドブック2012」(図3)を作成し、森林管理・林業の現場に向けて配布・普及を図りました。本研究は「予算区分:農林水産省実用技術開発研究(平成19-23年度)、課題名:広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発」による成果であり、北海道立林業試験場、秋田県農林水産技術センター森林技術センター、山形県森林研究研修センター、新潟県森林研究所、山梨県森林総合研究所、長野県林業総合センター、東北大学、東京農業大学、静岡大学、三重大学、(財)林政総合調査研究所との共同研究です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p8-9.pdf |
カテゴリ | いちご |