森林土壌の温室効果ガスの吸収・放出は、温暖化の影響で増大している

タイトル 森林土壌の温室効果ガスの吸収・放出は、温暖化の影響で増大している
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 橋本 昌司
阪田 匡司
森下 智陽
石塚 成宏
発行年度 2012
要約 森林土壌の温室効果ガスの吸収・放出を全国評価し、温暖化の影響で過去30年間に増大していることを明らかにしました。
背景・ねらい 森林は樹木と土壌からなります。森林土壌は二酸化炭素(CO2)ガスと一酸化二窒素(N2O)ガスを放出し、一方でメタン(CH4)ガスを吸収しています。本研究では、森林総合研究所が行ってきた観測から得られた膨大なデータに基づき、森林土壌が吸収・放出する温室効果ガスの量を推定するモデルを構築しました。このモデルを用いて、日本全国の森林土壌が吸収・放出した温室効果ガスの量を評価しました。その結果、この30年間(1980~2009年)の傾向として、メタンガスの吸収量が増加する一方で、二酸化炭素ガスと一酸化二窒素ガスの放出量が増加していることがわかりました。森林土壌の温室効果ガスの吸収・放出が増加していることは、日本の温室効果ガス削減の戦略策定を進める上で、森林の温室効果ガス吸収・放出の監視を強化する必要性を示唆しています。
成果の内容・特徴

森林における様々な温室効果ガスの動き

森林は樹木と土壌から成り立っています。森林では、樹木が光合成によって大気中の二酸化炭素ガス(CO2)を固定しています。一方で樹木は呼吸によって二酸化炭素ガスを大気中に放出しています(図1)。また、樹木が落とした落ち葉や枝などが土壌で微生物に分解されながらゆっくり蓄積しており、森林土壌は樹木の2倍以上もの炭素をためる巨大な炭素の貯蔵庫となっています。その森林土壌は、二酸化炭素ガスと一酸化二窒素ガス(N2O)を放出し、一方でメタンガス(CH4)を吸収しています(図1)。
森林土壌における温室効果ガスの吸収や放出は、気温や降水量の影響を受けることから、近年の気候変動が森林土壌の温室効果ガスの吸収・放出量にどの程度影響するのかを明らかにすることが、緊急の課題となっていました。

膨大なデータに基づいたモデル化と全国評価

森林総合研究所では、1990年代後半から全国の様々な森林土壌の温室効果ガス吸収・放出量を観測してきました。この膨大な観測データに基づき、森林土壌が温室効果ガスをどれだけ吸収・放出するかを予測するモデルを構築しました。そしてそのモデルと、気候や土壌のデータベースを組み合わせたコンピュータシミュレーションにより日本の森林土壌における温室効果ガスの吸収・放出量の経年変化を日本全国について評価しました(図2、3)。

地球温暖化により森林土壌の温室効果ガス吸収・放出が増大している

シミュレーションの結果、過去30年間(1980~2009年)においてメタンガスの吸収量が年率0.44%増加(温暖化を緩和)する一方、二酸化炭素ガスおよび一酸化二窒素ガスの放出量がそれぞれ年率0.23%、0.27%増加(温暖化を促進)していることがわかりました(図3)。これらは主に気温の上昇と、大気中のメタン濃度の上昇によるものです。また、二酸化炭素を基準として三種の温室効果ガスの温室効果を推定したところ、森林土壌からの放出量の増加は吸収量の増加を上まわっていました。今後、地球温暖化が進めば、今よりもさらに土壌における温室効果ガスの放出が増大していく可能性があります。
ただし、もともと森林の樹木による吸収量は大きいため、今回明らかになった土壌からの温室効果ガスの増加が、今の段階で直ちに森林の温暖化抑制効果に支障をきたすというものではありません。温室効果ガスインベントリオフィスから公表されている「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」によれば、2009年時点で日本の森林は樹木と土壌をあわせて年間約7,400万トン二酸化炭素を吸収しています。
本研究は、今後も森林の温室効果ガス吸収・放出の監視を強化するとともに、樹木による温室効果ガス吸収をさらに促進していく必要性を示唆しています。本研究の成果は、日本の温室効果ガス削減の戦略策定に役立てられます。

本研究は、「予算区分:一般研究費、課題名:環境の変化に対する土壌有機物の時・空間変動評価」及び、「予算区分:技術会議委託費、課題名:森林及び林業分野における温暖化緩和技術の開発」による成果です。
図表1 235338-1.gif
図表2 235338-2.jpg
図表3 235338-3.gif
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p32-33.pdf
カテゴリ くり データベース

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