タイトル | 日本産樹木におけるDNAバーコード分類システムの開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
吉丸 博志 吉村 研介 鈴木 節子 津村 義彦 能城 修一 勝木 俊雄 大谷 雅人 河原 孝行 藤井 智之 |
発行年度 | 2012 |
要約 | 短いDNA領域の塩基配列情報で種の同定を行うDNAバーコーディングにより、日本産樹木の約75%の種が同定できるようになりました。 |
背景・ねらい | 日本産樹木は1,100種以上ありますが、葉緑体DNA上の3領域の塩基配列情報を用いるDNAバーコーディングにより、約75%の樹種の同定が可能となりました。樹木の個体のどの組織も同じDNAをもっていますので、根、材、種子、葉の断片など形態だけでは識別しにくい材料の同定など幅広い応用が考えられます。 |
成果の内容・特徴 | DNAバーコーディングとはDNAバーコーディングは、特定の遺伝子領域の短い塩基配列情報(DNAバーコード)を用いて生物種の同定を行う方法です。既知の生物種についてDNAバーコード領域の塩基配列を調査して、同定の基準となる塩基配列情報(リファレンスバーコード)を取得することにより、新たなサンプルがどの種であるか、またどの種に近いかを推定できるようになります。植物については、葉緑体DNAのrbcL部分塩基配列(約600塩基)とmatK部分塩基配列(約840塩基)をDNAバーコードとして用いることが、2009年の第3回国際Barcode of Life会議で決定されました。日本産樹木の標本試料収集日本産樹木は約1,100種(変種まで数えると約1,300種)と言われています。これらについて、さく葉標本とDNA試料をセットにした収集を行い、6,997個体、1,037種(変種も数える)を収集しました(図1)。1つの種についてなるべく複数の地域から個体を収集することに努めましたが、これにより同じ種でも地域による違いがある可能性をチェックすることができ、また人為的ミスも発見しやすくなります。日本産樹木のDNAバーコーディング収集したDNA試料について、rbcL、matKに加えて、trnH-psbA遺伝子間領域の塩基配列(約152ないし983塩基)を解析しました。後者を加えた理由は、近縁種の識別効率を高めるためで、実際に2007年の第2回国際Barcode of Life会議ではこの領域も推奨されており、多くの国でこの領域の情報も蓄積されています。対象とするDNAバーコード領域を実験室で大量に増幅した後に塩基配列を解析しますが、非常に広い範囲の分類群を調べるため、分類群によっては増幅の効率が低くなる場合があり、rbcLで92.4%、matKで66.5%、trnH-psbAで87.5%の増幅成功率でした(表1)。塩基配列情報を比較して、種の識別効率をまとめた結果、rbcLとmatKでは63%の種が、さらにtrnH-psbAも加えた場合には74%の種がDNAバーコードにより識別できました(図2)。残りの26%の種は近縁種との区別ができなかったものです。 DNAバーコーディングでは植物の様々な組織から抽出されるDNAについて解析できますので、既知の樹木に関するデータベースの構築により、苗、材、根、種子、葉の断片など形態だけでは確定しにくい材料で樹種を識別することが可能となります。 本研究は、科学研究費補助金「森林資源保全のための樹木遺伝子バーコードの基盤構築と有効性に関する研究(20248017)」による成果で、東北大学鈴木三男教授、九州大学舘田英典教授、東京大学伊藤元己教授との共同研究です。また、各地の大学演習林などのご協力もいただきました。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p56-57.pdf |
カテゴリ | データベース |