タイトル | ヒラタケの放射性セシウム吸収を抑えた栽培法を開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
平出 政和 砂川 政英 根田 仁 吉田 聡 |
発行年度 | 2012 |
要約 | ヒラタケを栽培する培地へ放射性セシウムを吸着する物質を混ぜることにより、放射性セシウムの吸収を抑制したヒラタケの栽培方法を開発しました。 |
背景・ねらい | 東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、一部地域のきのこ類から放射性セシウムの規制値を超えるものが検出されました。消費者に安全なきのこを供給するため、また生産者の生活を守るためにも、安全なきのこの栽培方法が求められています。本研究では、ヒラタケを用いて放射性セシウムの吸収量を調査するとともに、放射性セシウムを吸着する物質をヒラタケの栽培培地へ混ぜることにより、放射性セシウムが検出されないヒラタケの栽培に成功しました。この物質を用いることにより、放射性セシウムが検出されないきのこの栽培が期待されます。 |
成果の内容・特徴 | ヒラタケの放射性セシウムの吸収量原子力発電所の事故により環境中に放出された放射性物質のうち、今後も注意して調査が必要なものは2種類の放射性セシウム(Cs-134とCs-137)です。きのこはこれらの放射性セシウムを吸収しやすいことが知られていますが、個々の栽培きのこの吸収量はほとんど報告されていません。そのためヒラタケの放射性セシウム吸収量を調べたところ、湿重量にて培地濃度の0.64~0.67倍になることがわかりました(図1)。ヒラタケのセシウム吸収量を抑える物質2012年4月より、きのこが含まれる一般食品の放射性セシウムの基準値が、より消費者の安全に配慮したキログラムあたり100ベクレルになりました。一方で、消費者からは、さらに低い基準値を望む声もあります。そこで、放射性セシウムと性質がほぼ同じで無害なCs-133を指標として、培地に加え栽培することでヒラタケのセシウムの吸収を抑える物質を探索したところ、フェロシアン化鉄(Ⅲ)(顔料プルシアンブルーの成分)が最も優れていることがわかりました(図2)。猛毒であるシアン化カリウムに名前が似ているので、安全性に疑問を感じる人もいるかもしれません。しかし、フェロシアン化鉄(Ⅲ)中のシアンは鉄と強固に結びついており、通常の状態で分解することはありません。また、フェロシアン化鉄(Ⅲ)は日本のみならず世界で広く放射性セシウムの除去用の経口剤として使用されているほか、ヨーロッパでは放射性セシウムの排出用として家畜の飼料へ混入することが認められています。しかしながら、我が国では食品添加物としては認められていません。フェロシアン化鉄(Ⅲ)による放射性セシウム吸収の抑制放射性セシウムを含む培地でフェロシアン化鉄(Ⅲ)の効果を検証しました。フェロシアン化鉄(Ⅲ)を用いずに栽培したヒラタケからはキログラムあたり湿重量で143ベクレルの放射能が検出されました(表1)。一方、同物質を用いて栽培したヒラタケの放射能濃度は検出限界以下でした。このように、フェロシアン化鉄(Ⅲ)は菌床栽培きのこの安全性を高める可能性が強い物質です。本栽培法は、生産現場への導入が容易であり、他のきのこ栽培での利用においても同様な効果が期待できるため、実用化に向けて研究しています。本研究は、平成23年度新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「植物から農畜産物への放射性物質移行低減技術の開発」による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p64-65.pdf |
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