スギの雄性不稔化に必要な遺伝子プロモーターの開発

タイトル スギの雄性不稔化に必要な遺伝子プロモーターの開発
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 栗田 学
小長谷 賢一
谷口 亨
発行年度 2012
要約 遺伝子組換えによるスギの雄性不稔化技術を開発するため、スギの雄花で機能する遺伝子プロモーターを単離し、その機能を解析しました。この遺伝子プロモーターの利用により、モデル実験植物(シロイヌナズナ)の雄性不稔化に成功しました。
背景・ねらい スギ花粉症はわが国の深刻なアレルギー疾患となっています。我々は、スギ花粉発生源対策の一つとして、遺伝子組換えにより花粉の無い雄性不稔スギを作出する研究を進めています。雄性不稔化のためには、花粉形成時期にスギの雄花で発現するプロモーターの制御下で、花粉形成を阻害する遺伝子を働かせることが必要です。本研究では、スギの雄花で特異的に発現するプロモーターを単離し、その発現時期や発現組織を解析しました。また、そのプロモーターを利用した雄性不稔化ベクターを作製し、遺伝子導入したところ、モデル実験植物であるシロイヌナズナを雄性不稔化させることを確認しました。
成果の内容・特徴

スギの雄花で特異的に発現する遺伝子プロモーターの単離と解析

スギの雄花で特異的に発現する遺伝子群を3つの異なる発達ステージ(雄花形成初期、花粉四分子期、成熟花粉期)から単離しました。各遺伝子群について塩基配列を解析し、スギの花粉形成途中で発現すると予測される遺伝子を選抜しました。これら遺伝子のプロモーターを単離して、それらの機能を解析したところ、スギやシロイヌナズナのタペータム(花粉形成時期に栄養分等を花粉に供給する組織)や発達途中の花粉で特異的に働くことが明らかになりました。

雄性不稔化ベクターの構築

バルナーゼ(RNA分解酵素)遺伝子とバルスター(バルナーゼに対する阻害タンパク質)遺伝子を利用して、雄性不稔化ベクターを構築しました(図1)。雄花で特異的に発現するプロモーターに連結したバルナーゼ遺伝子を導入すると、花粉形成時期のタペータムを破壊することにより、花粉形成が阻害すると考えられます。しかし、バルナーゼのRNA分解酵素活性が高く、雄花以外の組織で発現すれば植物の生育に悪影響を及ぼす危険性があります。そこで、この悪影響を押さえるためのバルスター遺伝子もベクターに連結しました。

雄性不稔化ベクターの効果の検証

シロイヌナズナは、短期間(約3ヶ月)で花粉形成を調査することができます。そこで、雄性不稔化ベクターの効果を検証するために遺伝子組換えシロイヌナズナを作製しました。各種組換え体の花粉形成能を調べたところ、組換え体の中には花粉を形成しないものがありました(図2)。このことより、スギの雄花で特異的に発現するプロモーターを利用した雄性不稔化ベクターは、シロイヌナズナの不稔化に有効であることが明らかになりました。現在、雄性不稔化ベクターを導入した遺伝子組換えスギの作出を進めています。
本研究で得られた成果は、遺伝子組換えによる雄性不稔スギの開発に役立つと期待しています。雄性不稔化は、遺伝子組換え樹木を野外で栽培した際に、花粉飛散により組換え遺伝子が拡散することを防止するためにも役立つ技術です。

本研究は、林野庁「遺伝子組換えによる花粉発生制御技術等の開発事業」、農林水産省「遺伝子組換え生物の産業利用における安全性確保総合研究」による成果です。
成果の一部はKurita,M ほか (2011 )Breeding Science 61:174-182をご覧ください。
図表1 235356-1.gif
図表2 235356-2.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p68-69.pdf
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