“遺伝子不活性化を防ぐDNA配列”の探索法

タイトル “遺伝子不活性化を防ぐDNA配列”の探索法
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2005~2012
研究担当者 岸本直己
長井純一
木下剛仁
上野敬一郎
大橋祐子
光原一朗
発行年度 2012
要約 遺伝子組換え体において生じる導入遺伝子の不活性化(サイレンシング)を抑制するDNA配列を、ハイグロマイシン抵抗性の獲得を指標として、DNAライブラリーから探す方法を開発し、この手法によってミヤコグサゲノムから3種類のDNA配列を単離・同定した。
キーワード 遺伝子不活性化、遺伝子サイレンシング、遺伝子組換え植物、形質転換
背景・ねらい 形質転換法による組換え植物の作製は、作物に新しい有用形質を付与する育種手段としてばかりでなく、遺伝子の機能を解析する研究手段としても、非常に重要である。しかしながら、導入した遺伝子が機能しなくなる遺伝子不活性化(サイレンシング)と呼ばれる現象が知られており、組換え育種や遺伝子機能研究の大きな障害となっている。こうしたサイレンシング現象を抑制することが可能になれば、遺伝子組換え体の作出は大きく効率化・加速化できると考えられる。本研究では“サイレンシングを抑制する能力”そのものを指標にして“導入遺伝子の転写型遺伝子不活性化(TGS:Transcriptional gene silencing)を防ぐDNA配列”を探索する方法を考案し、サイレンシング抑制機能を有するDNA配列を単離・同定することに成功した。
成果の内容・特徴
  1. 「35Sプロモーター(P35S)で制御される導入遺伝子が必ずTGSを起こす組換えタバコ植物」を選抜した。更にハイグロマイシン抵抗性獲得を指標として“TGSを抑制するDNA配列(ASR:anti-silencing region)”をスクリーニングする手法を考案した(図1)。この組換えタバコに、P35Sで制御されるハイグロマイシン抵抗性遺伝子(HPT)を導入すると、導入された遺伝子は必ずTGSを起こすため、ハイグロマイシンを含む培地上で致死となり、組換え体は得られない(図1左)。一方、同じHPTの上流にDNAライブラリーを連結して、この組換えタバコに導入した場合、もしライブラリー由来DNAの中に“TGSを抑制する能力”が有れば、ハイグロマイシン培地上で組換え体が得られる(図1右)。
  2. 考案した方法によって、ミヤコグサのゲノムDNAライブラリーを用いたスクリーニングを実施し、得られたハイグロマイシン抵抗性組換え体3個体から、異なる配列を有する3種類のASRを単離した(各々の長さは、3kb、0.3kb、0.2kb)。また、これらのASRは、P35Sで制御される遺伝子を導入するとサイレンシングを起こしやすい(スクリーニングに用いたものとは別の)組換えタバコ系統を用いた実験においても、サイレンシングを抑制する能力を示した(図2)。
  3. 3種類の配列のうち2つの配列は、サツマイモやシロイヌナズナにおいても導入遺伝子のサイレンシングを抑える能力を持つことが明らかとなった。
  4. 本方法によって、“TGSを抑制するDNA配列”の同定が、初めて可能となった。
成果の活用面・留意点
  1. 得られたDNA配列を用いることで、サイレンシングが起こりにくい形質転換用ベクターの改良や組換え育種への応用が可能になる。また、得られた配列中でTGS抑制能力を有する領域をより短く絞り込む事が出来れば、改良ベクターの構築が更に容易になる。
  2. 本方法により、植物DNAに限らず、あらゆるDNAから“植物の導入遺伝子のTGS”を抑制するDNA配列をスクリーニングすることが可能になる。
  3. 今後、ASRに結合するタンパク質の解析により、遺伝子不活性化メカニズムの解明が進むと期待される。
図表1 235357-1.gif
図表2 235357-2.gif
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h24/nias02401.html
カテゴリ 育種 たばこ 抵抗性 抵抗性遺伝子

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