タイトル |
ダイズの日長反応性を介した開花制御に関わる遺伝子を解明 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2007~2012 |
研究担当者 |
渡邊啓史
夏 正俊
坪倉康隆
山崎俊正
原田久也
石本政男
山田哲也
穴井豊昭
佐藤修正
田畑哲之
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発行年度 |
2012 |
要約 |
ダイズの開花期に最も大きな効果を及ぼす遺伝子(E1遺伝子)を単離し、日長に反応してダイズが開花する過程で、この遺伝子が花成ホルモンの一部であるフロリゲン遺伝子を介して開花時期を調節していることを明らかにした。
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キーワード |
環境適応性、日長、開花期、花成ホルモン、ダイズ
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背景・ねらい |
ダイズは日の長さ(日長)が短くなると開花が誘導される短日植物である。日長に反応する性質はダイズ品種によって異なるため、南北に長い日本では各品種が栽培できる地域は限られる。日長反応性を遺伝的に制御することで各栽培地に適した多収品種の開発や早晩性が異なる同質遺伝子系統群の育成が可能になり、ダイズ生産の規模拡大や安定化に貢献できる。本研究では、ダイズの日長反応性を制御する遺伝子のうち、開花時期を20日程度も変化させることができるE1遺伝子を同定し、その機能を明らかにした。
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成果の内容・特徴 |
- E1遺伝子座は第6染色体の動原体隣接領域にあり、遺伝的な組換えが抑制されていたため、遺伝子の同定が進まなかった。そこで、分離集団を約13,000個体まで増やして精度の高い連鎖解析を行い、限定された染色体上の位置情報からE1遺伝子の候補を特定した。
- E1遺伝子の機能を確認するために、E1候補遺伝子の発現量が低い早生品種の「カリユタカ」へ候補遺伝子を導入してその発現量を増加させたところ、ダイズフロリゲン遺伝子の発現量が減少し、開花が遅延した(図1)。
- E1遺伝子は新規の転写因子(B3ドメインタンパク質)をコードし、長日条件で誘導され、開花に直接関わるフロリゲン遺伝子の発現を抑制するのに対し、短日条件では発現が抑制され、フロリゲン遺伝子の発現が促進されることで開花に至ることが判明した(図2)。
- E1の塩基配列の一部が様々に変化した複数の変異品種を見出した。具体的には、正常なE1遺伝子(晩生型)を構成する174個のアミノ酸の一つが別のアミノ酸に変化した遺伝子(e1-as:中間型)を持つダイズ品種や、E1遺伝子中のDNAのうち1塩基が欠失した遺伝子(e1-fs:早生型)を持つ品種、E1遺伝子全体を持たない(e1-nl:早生型)品種が存在した。これらの変異品種を交配することにより、約20日の幅で開花期を変化させることが可能になった。
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成果の活用面・留意点 |
- E1遺伝子の多様性に関する情報は、DNAマーカー選抜による各栽培地に適した日長反応性をもつダイズ品種の効率的な開発に利用できる。
- 日長反応性を介してダイズの開花を制御するしくみの理解はまだ不十分である。栽培地域に適した品種の育成を加速するには、開花期や成熟期を制御する他のQTLについて分子レベルでの解析を進めるとともに、相互の関係を明らかにする必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h24/nias02404.html
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カテゴリ |
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