S型ワムシの生産コストがL型ワムシよりも安価な理由について

タイトル S型ワムシの生産コストがL型ワムシよりも安価な理由について
担当機関 (独)水産総合研究センター 日本海区水産研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 小磯雅彦
発行年度 2011
要約 S型八重山株とL型奄美株を水温25℃、塩分26psuの培養条件でクロレラの給餌量を変えて培養し、それぞれの餌料転換効率を求めた。その結果、餌料転換効率はS型が0.31~0.42に対して、L型は0.12~0.31と低かった。L型に比べてS型は餌料転換効率が大幅に高いことから生産コストが安くなり、また、培養水中に無駄に排泄される有機物量が少ないことで水質悪化等の増殖阻害が起こりにくいと推察される。
背景・ねらい 海産魚の不可欠な初期餌料であるワムシは形態的特徴や増殖特性などが異なるS型とL型の2つのタイプがあり、種苗生産現場ではこれまで対象魚種や培養設備などに応じて使い分けてきた。しかし、今後は生産性やコスト等の経済面にも考慮して利用するワムシのタイプを使い分ける必要がある。一般的にはS型の生産コストはL型よりも安価であることが知られているが、重量換算での具体的な数値が示された事例はほとんど無い。そこで、本研究では生産性やコストを検討する場合に重要な指標となる餌料転換効率をS型とL型でそれぞれ調査した。
成果の内容・特徴 供試ワムシには、S型八重山株とL型奄美株を用いた。両ワムシの培養は、500L水槽を用いて、培養水温は25℃、塩分が26psuの条件で3日間の植え継ぎ式で行った。濃縮淡水クロレラの給餌は、ワムシ1億個体に対してS型が0.1~0.6L/日の6段階、L型が0.3~1.0L/日の8段階とし、定量ポンプで連続給餌した。各培養において餌料転換効率(純生産量の乾物重量/総給餌量の乾物重量)を求めた。その結果、餌料転換効率は、S型では給餌量が0.1L/億個体で0.31と最も低く、0.4L/億個体で0.42と最も高かった。一方、L型では、0.3L/億個体が0.12と最も低く、0.5~1.0L/億個体の範囲で0.25~0.31と高かった。餌料転換効率がL型に比べてS型は大幅に高いことが示され(図1、2)、このことで生産コストが安くなると考えられる。ワムシの餌料転換効率は過去にも調査はされているものの、近年のワムシ培養法や餌料による調査は本研究が初めてである。また、種苗生産現場ではL型よりもS型の方が安定培養しやすいことが経験的に知れているが、本研究により餌料転換効率がL型に比べてS型は大幅に高いことから、培養水中に無駄に排泄される有機物量が少ないことで水質悪化が起こりにくい等、科学的な裏付けができた。
成果の活用面・留意点 S型とL型の餌料転換効率が大幅に異なる情報は、生産性やコスト等の経済面にも配慮したワムシ培養において利用するワムシタイプを選択する際の重要な情報となる。種苗生産現場では必要に応じてL型ワムシを利用する場合もあるが、その場合にはS型ワムシよりも生産コストが高く、また、水質悪化の影響による増殖不良も懸念されることから、経済面のみならず培養管理へのさらなる配慮の必要性が提案される。
図表1 235394-1.gif
図表2 235394-2.gif
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=3300&YEAR=2011
カテゴリ コスト

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