環境要因、特に貧酸素と台風が大阪湾のガザミの加入に及ぼす影響

タイトル 環境要因、特に貧酸素と台風が大阪湾のガザミの加入に及ぼす影響
担当機関 大阪府環境農林水産総合研究所
研究期間 2005
研究担当者 有山啓之
David H. Secor
発行年度 2011
要約 ガザミの漁獲量は大きく変動することから、大阪湾における漁獲データと環境要因との関係を調べた。漁獲データには1984~2008年の石桁網漁業者のCPUEを用い、主成分分析と重回帰分析を用いて解析した。この結果、底層が貧酸素化すると稚ガニの斃死を招くため正常な酸素状態は加入成功の必要条件であり、台風の襲来数が多いと水塊混合等により生残に好影響を与えることが明らかとなった。
背景・ねらい 大阪湾は富栄養化した閉鎖性海域で、特に湾奥部では赤潮が頻発し夏季に底層が貧酸素化する。しかし、ここでは多くの漁業が営まれ2.5~4.5万トンの年間水揚げ量がある。ガザミは大阪湾の底曳網(特に石桁網)の重要魚種であるが、漁獲量は大きく変動するため、加入に環境要因が及ぼす影響を把握する必要がある。
成果の内容・特徴 解析には(1)CPUEのピ-ク月の値、(2)CPUEのピ-ク2ヵ月前の値、(3)加入群の孵化月における抱卵ガニのCPUE、(4)加入群の浮遊期における水温と塩分、(5)加入群の着底時と着底2週間後の底層酸素飽和度、(6)近畿地方への年間台風接近数を用いた。25年間のCPUEは0~319尾/日・隻と激しく変動したが、100尾/日・隻以上の豊漁は1988、1996、1997、2004、2005年に見られた(図1)。これらは8月前後か11月前後であり、過去の知見からそれぞれ前年晩期発生群と当年中期発生群に由来すると考えられた。そこで、上記(1)に8月または11月のCPUEを用いたところ、8月のCPUEは稚ガニ期の底層酸素飽和度および2ヵ月前のCPUEと正の相関があり、台風の接近数とも関係があった。また、11月のCPUEは台風接近数と強い正の相関があり、底層酸素飽和度とも関係していた。実際、8月に豊漁であった1988年と1996年はこれらの群が着底する前年9月中旬と10月上旬に貧酸素水塊は消滅しており、11月に豊漁だった1997年と2004年には着底期の8月中下旬と9月上旬の貧酸素化は軽微であった(図2)。なお2005年8月の場合は、前年9月下旬の着底期に強く貧酸素化していたのに豊漁であったが、漁獲個体が大型であり、2004年10月からの豊漁が継続していたと推定された。以上から、貧酸素は稚ガニの斃死を招く重要な要因で、正常な酸素状態は加入成功の必要条件であり、2004年に多かった台風接近数に関しては、水塊混合による貧酸素水塊崩壊などが生残に好影響を与えたと考えられた。
成果の活用面・留意点 ガザミ資源が底層の貧酸素化に大きな影響を受けていることから、今後は海水交換の促進や負荷量の削減により貧酸素化の軽減を図る必要がある。ただし、負荷量に関しては、最近栄養塩減少による生産量の低下が懸念されているため、慎重な検討が必要である。
図表1 235406-1.gif
図表2 235406-2.gif
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=3181&YEAR=2011
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