タイトル | 耳石染色法を用いた大阪湾産イヌノシタの年齢と成長解析 |
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担当機関 | 大阪府環境農林水産総合研究所 |
研究期間 | 2000 |
研究担当者 |
日下部敬之 |
発行年度 | 2011 |
要約 | 大阪湾産イヌノシタについて、耳石断面をメチルバイオレットBで染色して輪紋を計数し、年齢と成長を明らかにした。染色により出現した輪紋は満1歳から1年に1本、産卵期(6~7月)に形成される年輪であると確認された。雌雄別にBertalanffyの成長式を求めたところ、成長に雌雄差が認められた。底びき網による漁獲開始を4~6ヶ月遅らせることで漁獲金額が増加する可能性が示唆された。 |
背景・ねらい | 本種は南日本の底曳き網漁業の重要資源であるが、生態研究が遅れており年齢と成長に関してもほとんど知見がない。そこで大阪湾産の本種について、資源解析のために不可欠な生物情報である年齢と成長を明らかにするための研究を行った。一般に魚類の年齢査定には耳石に記された輪紋を用いることが多いが、本種の耳石は透明帯と不透明帯の透明度の差が小さく、加工せずにそのまま観察する方法では輪紋計数が困難であるため、メチルバイオレットBで耳石断面を染色して輪紋を出現させ、年齢査定を行った。 |
成果の内容・特徴 | 染色により、イヌノシタの耳石断面にはきわめて明瞭な赤紫色の輪紋が出現し、容易に計数が可能となった。耳石の縁辺成長率の経月変化と小型個体の採集調査結果から、染色により出現した輪紋は、満1歳から1年に1本、6~7月(産卵期)に形成される年輪であることが確認された。雌雄別にBertalanffyの成長式を求めると、雄(n=314):TLt=352.9(1-e^(-0.703(t+0.528)))、雌(n=470):TLt=406.6(1-e^(-0.638(t+0.422)))となった(TLt:年齢tにおける全長mm)。成長には雌雄差が認められ、各年齢の全長と体重は雌が雄を上回って、2歳の雌は3歳の雄とほぼ同サイズであった。また、生後1年の成長が速く、1歳の推定全長は極限全長の66%(雄)および60%(雌)に達していた。生後1年の成長が速いことは同属他種でも多く報告されており、イヌノシタ属に共通した傾向と考えられた。 水揚物調査では、4~9月に単価の安い小型個体(全長250mm未満)が高い割合を占めていた。今回推定した成長式を当てはめると、漁獲開始を現状より4~6ヶ月遅らせて全長250mmとすれば、体重増加と単価上昇の相乗効果はその間の自然死亡による資源減少を大きく上回り、漁獲金額が増加すると予想された。 |
成果の活用面・留意点 | メチルバイオレットBによる耳石断面染色法が、きわめて有効な輪紋確認法になりうることが実証された(魚種によって明瞭に染色されない場合もあると情報を得ており、種ごとに確認が必要)。また、年齢と成長が明らかになり、本種の資源管理方策をたてることが可能となった。一般に底びき網において特定種の漁獲開始サイズのみを拡大するのは困難な場合が多いが、ウシノシタ類は底びき網入網後の行動習性(すぐに網口近くの網底部分から下へ抜け出そうとする)を利用して小型魚を逃がせる可能性がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=3203&YEAR=2011 |
カテゴリ | 加工 |