タイトル | 飼育方法の適正化によるウナギ仔魚飼育成績の改善 |
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担当機関 | (独)水産総合研究センター 増養殖研究所 |
研究期間 | 2005~2011 |
研究担当者 |
薄 浩則 今泉 均 小田憲太朗 神保忠雄 増田賢嗣 橋本 博 松田圭史 田中秀樹 野村和晴 |
発行年度 | 2011 |
要約 | 対照区と、飼育水温を高く、給餌頻度を多くし、成長に従って飼育密度を減らした適正化区の2試験区を設け、比較飼育試験を行った。適正化区においては対照区よりも早い時期から変態する個体が現れ、最終的に得られたシラスウナギも多かった。この試験により、飼育環境の適正化によって飼育期間を短縮でき、変態完了率も改善できることがわかった。 |
背景・ねらい | 天然のウナギが受精卵から変態開始に至るまでの期間は100~160日とされているが、人工飼育下では最短で150日程度、最長では700日以上に及ぶ。飼育期間の長期化は、多大な経済的、時間的及び人的コストを要するうえ、疾病や形態異常のリスクの増大にも繋がっている。そこで、飼育水温、給餌頻度、飼育密度などの飼育条件を適正化することによって、生残・成長を改善し、早期かつ効率にシラスウナギへと変態させる飼育方法を検討した。 |
成果の内容・特徴 | 比較飼育試験には対照区と適正化区を各3群ずつ設け、6日齢の仔魚を1群当たり250~350尾として飼育を開始した。対照区は飼育水温を23℃、給餌頻度は2時間毎の1日5回とし、試験終了まで1群あたり1面の水槽で飼育した。これに対して適正化区では飼育水温を初期は25℃、のち徐々に上昇させて73日齢以後は27.5℃とし、118日齢以後は27.5℃を基調としつつ、昨年度変態促進効果がうかがえた7日あたり1日間だけ25℃とする温度変化を与えた。また、給餌頻度は2時間毎の1日5回に加えて、5回目の給餌の8時間後に6回目の給餌を行った。飼育密度は仔魚の成長に応じて分槽によって減少に努め、74日齢以降は1群あたり5水槽で飼育した。この結果、成長に関しては、対照区では20日齢で平均11.0~11.2mm、100日齢で23.6~26.0mmであったのに対し、適正化区では20日齢で11.4~12.0mm、100日齢で28.3~29.2mmと、改善がみられた(図1)。変態を完了した個体はその都度確認し、変態完了時の日齢を記録した。また累積の変態完了個体数を収容尾数で割って変態完了率を算出し、両区間で比較検討した。変態完了率は、対照区では200日齢で全群0.4%、400日齢で5.2%~7.0%であったのに対し、適正化区では200日齢で4.3%~5.6%、400日齢で10.8%~15.1%に達し早期化が認められた(図2)。このように、飼育水温、給餌頻度、飼育密度の調整を行うことにより、シラスウナギまでの飼育期間の短縮と成長・生残率の向上が認められ、飼育成績が改善された。 |
成果の活用面・留意点 | 飼育管理手法の改善を行うことにより、成長・生残の向上並びに仔魚期に要する期間の短縮につながり、疾病や形態異常のリスクを下げられるとともに、飼育に要するコストを削減できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=3266&YEAR=2011 |
カテゴリ | コスト |